なぜかやる気がでない、体がだるいと感じる病気「橋本病」とは

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このところずっとやる気がでなくて、何をやるのも面倒くさい、そういえば体もだるいのが取れない・・とお悩みの方いませんか?

少し疲れているのかと思ってビタミン剤を飲んだり、睡眠をよくとってみたりしてもこの無気力でだるい症状がとれない場合、少し不安になりますね。

かといって病院へ行くにも何科を受診するのか、そもそも病気でもないのに病院へ行くのがためらわれる、でもこのつらい症状をどうにかしたい!と思っているかたも多いでしょう。

この症状だけでは確かに確定診断は難しいと思われます。ただ、ひとつ可能性としてお知らせしたいのが「橋本病」という甲状腺の病気です。

これは甲状腺専門医でないと判断が難しい病気なので内科はじめいろいろな病院を転々とする前に知識として覚えておいてください。

甲状腺ってなに?

甲状腺は人間の脳、骨、皮膚、内臓、筋肉などの新陳代謝と神経の働きを司るホルモンを分泌している器官です。生物のあらゆる成長や生きていくために必要不可欠なとても大切な働きをしています。

健康な人では身体の活動に応じてホルモンの分泌量と消費量がうまくバランスをとって元気な身体を保っています。このホルモンは脳の下垂体によってコントロールされており、各内分泌器官への必要なホルモンの分泌量の指令を出しています。

甲状腺はとても大きな内分泌器官で、首の前ののどぼどけのちょうど下部分に蝶々のような形をして広がっています。この甲状腺からはサイロキシンとトリヨードサイロニンという2種類の甲状腺ホルモンを分泌しています。

分泌されるホルモンの量やバランスが崩れると、部分的だけでなく全身、または心にもさまざま不快な症状を引き起こします。

甲状腺ホルモンがうまく分泌されることによって人体の細胞の成長や新陳代謝や神経活動がバランス良くおこなわれており、生物の元気と活力の源となるホルモンを分泌しているのが甲状腺だと言えます。

橋本病ってバセドウ病とは違うの?

ホルモンの異常によって引き起こされる病気は大きく2つに分類されます。

ひとつは血中のホルモン量が正常より過多になる機能亢進症、もうひとつは逆にホルモン量が正常より少なくなる機能低下症です。

20代から30代の女性に多いバセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に生成される甲状腺ホルモン機能亢進症ですが、その逆の甲状腺の機能が低下する病態もあります。

この甲状腺ホルモンの減少によっておこる病気が「橋本病」です。機能亢進症のバセドウ病と機能低下症の橋本病では同じ甲状腺の疾患でも症状の現れ方に大きな違いがでてきます。

甲状腺の病気といえば認知度の高い「バセドウ病」と思われがちですが、バセドウ病の症状に全く当てはまらないので甲状腺の疾患ではないと自己判断するのは良くありません。逆の病態である「橋本病」という甲状腺の病気があるのです。

橋本病について

「橋本病」の名前の由来は、この疾患について約100年前の1912年(大正元年)に九州大学の橋本策(はしもとはかる)博士によって初めて論文が書かれたことから、博士の名前にちなんで「橋本病」と名付けられたことです。

橋本病という日本人の苗字の入った病名であることから日本人特有の病気を連想しますが、欧米でも非常に多い病気です。アメリカでは50代の10人に1人が橋本病であるとされ、世界で最も有名な日本人の名前のついた病気です。

橋本病は「慢性甲状腺炎」とも呼ばれています。文字通り甲状腺の炎症が慢性化した病気です。しかし多くの場合において炎症をはじめとする症状がありません。

橋本病はバセドウ病と同じように細菌やウイルスとは関係なく、甲状腺に対する自己抗体ができて甲状腺の組織を徐々に破壊していくという自己免疫疾患のひとつです。そのため橋本病には炎症といっても熱や痛みなどの通常の炎症の症状はありません。

橋本病には潜在的な患者が多く、約70%の人は無自覚、無症状のまま病気に気づかずに生活しているとされます。

どの年代でもかかることはありますが40代から50代の女性に最も多くみられます。男性1人に対して女性30人くらいの割合で疾患がみられます。

橋本病の症状は?

甲状腺の病気は全身および精神面で多様な症状がでるために病院でも何科にかかれば良いのか患者が困惑し、受診した科では多岐に渡る症状から誤診されがちだと言われます。特に初期の症状では非常にわかりにくいものが多くあります。

バセドウ病と橋本病という甲状腺の病気の主訴を並べただけでも、動悸・イライラ・物忘れ・倦怠感・便秘・下痢・血糖値異常・湿疹・かゆみ・脱毛・体の震え・痩せ・肥満などあらゆる症状があります。

これらの症状がバセドウ病と橋本病ではほぼ逆の現れ方をするのですが、それを考慮にいれても、内科・婦人科・循環器科・皮膚科・神経科・心療内科など、どこで受診するべきか迷うことでしょう。

また女性に多くみられる病気で、更年期障害の症状と非常に似通っていることから更年期障害の診断を受け、まったく甲状腺の治療をせずにいつまでも症状が改善しなくて悩むこともあります。

比較的症状が目立たない橋本病ですが、「首の甲状腺の腫れ」だけはみとめられます。これが小さいと分かりにくいのですが大きくなると自分でも触ってわかるようになり、さらには他の人に首の腫れを指摘されることもあります。

橋本病のセルフチェック

多様な症状をあらわす橋本病ですが主に訴えられる症状を以下にあげます。

身体面

疲れやすい、倦怠感、寒がりになる、汗が出ない、皮膚の乾燥、喉頭の腫れで声が低くしゃがれる、徐脈(脈拍がゆっくり)になる、むくみ、便秘、筋力が低下する、月経不順、コレステロール値の上昇、肝機能障害、食事量が少ないのに太りやすい

精神面

やる気がでない、元気がない、ボーっとしている、物忘れが多い、いつも眠い、物事を始めるのがおっくうになる

このように橋本病では症状があらゆる部分に現れることがあります。比較的初期のうちか

ら無気力、物忘れ、居眠りなど精神面での症状が現れやすいのも特徴です。

橋本病の症状と治療

ホルモンがどれほど不足しているかの程度や症状がどこに現れるかも人それぞれ違いますし、身体面だけでなく精神面にとても影響があるため症状は多種多様です。ではなぜこのような多岐に渡る症状が出るのでしょうか?治療法は確立しているのでしょうか?

症状はこれが理由

1疲れやすい、倦怠感、物忘れ、ボーっとしている、眠気.・・・橋本病は甲状腺がじわじわと破壊されてホルモンがうまく作れなくなる病気ですから、「元気の源」となる甲状腺ホルモンが少なくなれば心身ともに活力が失われて、元気がなくなるのは当然です。

2.むくみ・・・甲状腺ホルモンは新陳代謝を高める働きをしています。このホルモンが不足することによって身体の水分がうまく排出されずに体内にたまり、さまざまな部位がむくみを持つようになります。

むくみでまぶたが腫れて目が細くなり、唇も腫れぼったくなるとボーっとしたような表情になり、橋本病患者特有の顔つきとなります。

3.寒がりになる・・・身体がエネルギーを燃焼できなくなるため、体温を作り出す力が弱まり体温低下の症状となります。冷えを感じ冬はいくら厚着でも寒く、夏でも暑さをあまり感じない寒がり傾向になります。

4.汗をかかない・・・甲状腺ホルモンが不足して代謝が悪くなると体温が低くなるため汗をかく力が弱くなります。

5.皮膚の乾燥・・・汗をかかないので代謝の悪い皮膚の潤いやつやはなくなりカサカサになります。乾燥が進むと白い粉をふいたような肌になることがあります。

6.徐脈(脈がゆっくりになる)・・・心臓の働きが低下しているので脈拍が1分間に60以下という脈(鼓動)がゆっくりと弱くなります。

7.便秘・食欲減退・・・胃腸の働きが低下するので食欲が減退します。腸の蠕動運動も弱まりお腹がはって便秘しやすくなります。バセドウ病では下痢ぎみになるのと正反対です。

8.太りやすい・・・食欲がないので食事量が減りますが、むくみのためと新陳代謝が悪くなってエネルギーを燃焼できないために太りやすくなります。

9.こむらがえり、つることがある・・・甲状腺ホルモン不足で血液の循環が悪くなるために筋肉に影響がでます。筋力が落ちて、運動しなくてもふくらはぎや腰などがこむらがえり、つるなどの症状がでます。

10.月経異常・・・甲状腺ホルモンは卵巣の機能に深く影響します。月経過多(月経量が多い)や、病気が進むと期間が長くなるや間隔があくなどの月経不順となり、重症では無月経となることがあります。

橋本病の治療

治療法はとてもシンプル、「不足しているホルモンを薬でおぎなうこと」です。橋本病の治療では機能低下していない場合では定期的な経過観察となり、基準以上の機能低下が認められる場合は薬による治療を行います。

甲状腺機能が低下している場合は、甲状腺ホルモン薬を飲むことで不足しているホルモンを補います。チラーヂンSやチロナミンなどのホルモン薬を服用します。

甲状腺の病気と妊娠・出産

甲状腺の病気の女性が気になることと言えば無事に妊娠・出産できるかということでしょう。甲状腺ホルモンは女性の卵巣機能にもかかわりがありますのでホルモンが多すぎたり少なすぎると流産や早産の危険性や、胎児への影響が可能性としてあります。

しかし、それはバセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患に気づかず治療を受けていない女性の場合であり、適切な治療をすれば良い経過をたどることができます。

このため、将来妊娠を望む女性は早めに甲状腺のチェックもしておくことをおすすめします。検査は問診、触診、エコー検査、血液検査など安全で簡単なものですので安心して受けてください。

なお妊娠と出産という母体へのストレスにより免疫系が乱れて、産後は甲状腺機能が約3ヶ月ほど安定しないことがあります。これを産後の肥立ちが悪い、育児ノイローゼなどと勘違いされがちですが元に戻りますので心配しないでください。

橋本病の人の食事と生活

橋本病ではヨードの摂りすぎについては要注意です。ヨードの大量摂取は、甲状腺の腫れや甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があるからです。

海藻の中では昆布にヨードが多く含まれていますが、ひじきやわかめ、のりなどは他の食事と一緒にバランスよくとる分には問題がないでしょう。また、うがい薬のイソジンにもヨードが多く含まれているので注意してください。

そして、新陳代謝が弱くなって身体を動かすのがおっくうな橋本病の人は食事のカロリーを抑え気味にすることがポイントです。あまり食べないのに太りやすくなっていますのでカロリー制限を心がけてください。

橋本病では運動面の制限はありません。活力が低下して元気がないので動くのも面倒に感じるでしょうが、腸の働きを促して便秘解消のために軽い運動をしましょう。家事程度の軽作業から初めてウォーキングや散歩、サイクリングなども良いです。

甲状腺の病気では生活のリズムが乱れがちですが、早寝早起き、とくに早起きをすると体内リズムが整うことで症状の緩和、改善にとても役立ちます。意識して努力して早起きを心がけてみてください。

甲状腺の病気で命にかかわることはとても稀です。甲状腺の病気は厄介で治らない病気と思い込んでいるかたも多いのですが、近年では治療方法が進んでおり、治療の効果が上がれば健康を取り戻せるのです。

橋本病では薬をきちんとのむこと、自分で生活リズムを整えるなどの工夫をすることで見違えるほどの元気になることが可能です。時間はかかっても元気になれることを忘れずに日々を楽しく生きてください。

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