自己破産の内容や手続きの詳しい流れ!周囲への影響などの注意点

思いがけない収入の減少や事業経営での失敗など、借金が膨らんでしまう原因はさまざまです。膨らんだ借金が返済できない状態になると、最終手段として自己破産で解決することになります。

自己破産には破産手続と免責手続の2種類があります。ここでは、破産手続について詳しくご紹介します。破産手続の内容や、手続の流れ、注意すべきポイントなどをわかりやすくご説明します。

破産手続とは?

破産手続は、破産法の定めに従って、債務者(破産者)の財産をお金に換え、返済する手続きです。財産の換価処分は破産管財人(裁判所から選ばれた弁護士)が行い、それによって得られた金銭は、債権者に公平に弁済、配当されます。

破産手続は、破産法に基づいて行われる倒産手続の一種です。破産法や倒産手続についても詳しくご説明します。

倒産手続とは?

破産手続は倒産手続の一種ですが、倒産手続とは何なのでしょうか。

倒産手続は、法人または個人が経済的に破綻し、借金を返済をできない状態に陥った時に行う処理や手続のことです。

倒産手続は、倒産状態に陥った法人や個人の経済的更生を図ったり、清算したりすることを目的に行われ、法的倒産手続と私的倒産手続の2つに分けられます。

法的倒産手続
裁判手続による倒産手続のことで、法的整理と呼ばれます。破産手続もこれに含まれます。

私的倒産手続
裁判所は介さずに、債権者と債務者で話し合って倒産処理を進めていく手続のことで、私的整理と呼ばれます。

破産手続きは、法的倒産手続の最も基本とされる手続きです。

破産法とは?

破産手続きは破産法に基づいて行われます。

破産法は、破産手続を規律する法律で、破産手続の方法や流れなどが細かく規定されています。

破産手続は、債務者や債権者が勝手に行えるわけではなく、手続はすべてこの破産法に従って行われます。

破産手続が倒産手続の一種であるように、破産法は倒産法(倒産処理法)の一種でもあります。倒産法には、債務者の財産をすべて処分する「清算型」タイプと、財産は処分せずに債務者の生活再建を目指す「再建型」タイプがあります。

破産法は清算型タイプの基本となる法律で、倒産法の基本となる法律ともいえます。

破産手続を、債務者自身が申し立てれば「自己破産」、債権者が申し立てれば「債務者破産申立て」となります。債権者破産申立ては、予納金が高額であるためめったに行われることはなく、破産手続のほとんどは自己破産です。

破産手続の流れ

基本的な破産手続は、次のような流れで行われます。

①専門家への相談・依頼→②破産申立て→③破産手続の開始決定→④破産管財人の選任→⑤財産等の調査開始→⑥債権者集会→⑦債権者への配当手続→⑧破産手続の終了

それぞれの工程について詳しく説明します。

①専門家への相談・依頼

まず、弁護士に自己破産を検討していることを相談します。

債務整理の相談は司法書士にもできますが、自己破産の場合、裁判所での手続の際に司法書士は代理人になれないため、弁護士に依頼する必要があります。

司法書士は、簡易裁判所の代理人にはなれますが、自己破産の申立ては地方裁判所で行うため、弁護士でないと代理人になれません。

②破産申立て

申立てに必要な書類を集め、破産申立てを行います。

自己破産の手続にはさまざまな書類が必要で、弁護士が用意してくれた書類に必要事項を記入していく形ですが、なかなか書類が集まらない場合は、申立てまでに半年以上かかることもあります。

必要な書類は裁判所によって異なりますが、一般的に以下のものは必要とされます。

  • 破産手続開始及び免責申立書…破産者の個人情報、借金の額、借入時期や所有財産などを記入
  • 陳述書…借金した理由、自己破産でしか解決できない理由、反省文などを記入
  • 債権者一覧表…すべての業者名と債務額、借入時期や返済額なども記入
  • 資産目録…住宅や自動車、現金など、すべての財産を記入
  • 収入状況…1ヵ月の収入と支出の詳細を記入

必要書類は予定どおり提出できるように準備しましょう。書類の準備とともに、弁護士費用の着手金や裁判費用も準備しておく必要があります。手続きが長引いてしまわないように気をつけましょう。

③破産手続の開始決定

申立てを行うと、裁判所による破産手続開始要件の審査があります。この審査が終わると、破産手続の開始が決定します。

④破産管財人の選任

破産手続が開始すると、まず、裁判所から破産管財人が選任されます。一般的に、裁判所の管轄地域内にある法律事務所の弁護士から選ばれ、破産者と債権者の間に入って手続を進めます。

破産管財人は、破産者の財産の管理や処分をする権利を有します。

お金に換えられるような財産がまったく無い場合、破産管財人は選任されず、破産手続は同時廃止事件となります。

同時廃止事件とは?
破産手続の開始と同時に破産手続が廃止され、終了になることです。めぼしい財産がなく、破産手続費用を支払うことが出来ない場合、破産手続は行われません。

自己破産を行う人ほほとんどが、これといった財産を持っていないことが多いです。破産管財人を選ぶまでもなく、管財事件にするには財産が足りないと裁判所がみなした場合は同時廃止事件となります。

管財事件とは?
一定額以上の財産を持っている人の自己破産の手続のことです。破産手続が開始し、裁判所から選任された破産管財人が、財産の調査や処理を行います。

⑤財産等の調査開始

管財事件として手続が進み、破産管財人が選任されたら、財産の調査が開始されます。

破産手続が開始された時点で、破産者が所有していた財産は、破産管財人によって管理されるようになります。管理される破産者の財産は、「破産財団」と呼ばれます。

破産手続を行うと、破産者の相続財産や信託財産を含むほとんどの財産が、破産財団という形でまとめて破産管財人に管理されるようになります。

ただし、破産者の経済的更生を図るため、新得財産と自由財産は破産財団には組み入れられず、手元に残すことができます。
新得財産…破産手続開始後に手に入れた財産のことです。
自由財産…破産手続開始後も手元に残しておける財産のことです。

では、具体的にどのような物が新得財産と自由財産に当てはまるのか、見ていきましょう。

新得財産
破産財団は、破産手続の開始時点で破産者が所持していた財産に限られるため、破産手続開始後に手に入れた財産は含まれません。新得財産には、以下のようなものがあります。

・破産手続開始後に支給される給与、賞与、退職金
・破産手続開始後に贈与された財産
自由財産
・預貯金を除く99万円以下の現金

・生活に必要な衣服、寝具、冷蔵庫や電子レンジなどの台所用具、洗濯機、1ヶ月分の食料や燃料、仕事に欠かせない道具、仏像など、差押えが禁じられているもの

・自由財産の拡張が認められた財産(裁判所によって異なりますが、東京地裁の基準では、残高20万円以下の預貯金、20万円以下の生命保険解約返戻金、評価額20万円以下の自動車、支給見込額160万円以下の退職金債権、居住用家具の敷金債権、電話加入権、家財道具などが自由財産として認められています。)

・過疎化地域の土地など、処分費用が高額になるものや買い手が付かず換価が困難なもの

このように、自由財産は意外と多くあり、破産手続をしても必要最低限の財産を失うことはありません。

新得財産と自由財産以外の財産は、破産財団として管理されることになりますが、破産財団の中には、破産者の家にあっただけで、元々は他の人のものだったというものもあります。

破産者のものではなかった場合、本当の持ち主は、取戻権によって破産財団からその財産を取り戻すことができます。
また、破産財団の中に担保権が設定されているものがあれば、担保権者は担保権によって優先的に弁済が受けられます。

このように、持ち主の違う財産があったり、担保権が設定されているものがあると、破産財団は減少していきますが、減少するばかりではなく、調査によって新たな財産が発覚することもあり得ます。本来は破産者の財産なのに何らかの手違いで財産が他の人のところにあったというケースもあります。

破産者の財産は、増減を繰り返して破産財団を形成していきます。

⑥債権者集会

債権者集会は、債権者に対して破産手続の進捗状況を報告するために行われます。裁判所で開かれ、破産者の財産状況や換価状況、配当の見込みなどを債権者に報告したり、債権者からの質問や意見を受け付けたりします。

出席者は、債権者、破産者、破産管財人、裁判官で、弁護士も同席できます。

債権者集会というと、怒号や罵声が飛び交うイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、実際そんなことはありません。

法人の自己破産と違って、個人の場合、債権者は債権者集会に出席しないことが多く、出席しても傍聴のみで終わることが多いため、ほとんどの場合5~10分で終わります。

⑦債権者への配当手続

破産財団が確定し、債権者集会が終わったら、債権者に弁済や配当がなされます。

破産手続きでは、換価処分された財産がすべての債権者に公平に分配されます。

強制執行手続の場合は、換価処分された財産が特定の債権者に配当されてしまうことがあります。早い者勝ち状態になり、不利益を被る債権者も出てくるため、すべての債権者に公平な分配ができるよう、破産手続という制度が作られました。

破産財団を形成し、債権者に弁済または配当していくことが、破産手続の中心的な手続です。

もし、破産財団を適切に形成する前に、破産者が勝手に特定の債権者に弁済してしまったり、債権者が勝手に破産者の財産を回収してしまったりしたら、どうなるのでしょうか。

破産財団を適切に確保するために、破産者・債権者の勝手な行為は禁止されています。破産者が不公平な弁済をすることや、債権者が個別に債権回収を行うことは禁じられており、場合によっては破産犯罪として処罰されます。

破産者や債権者の独りよがりな行為を適切に制限することも、破産手続の重要な役割です。

⑧破産手続の終了

債権者への弁済や配当が完了すれば、破産手続は終了です。

破産手続における最終的な目的は、換価処分して金銭化した破産者の財産を、破産管財人が債権者に公平に配当することです。

よって、配当が完了すれば、目的は達成したことになり、破産手続は終結されます。

免責手続とは?破産手続で清算しきれなかった債務の行方

破産手続によって財産を換価処分してもなお清算しきれなかった場合、残りの債務はどうなるのでしょうか。

破産手続の目的は破産財団を債権者に公平に配当することでしたが、自己破産の目的は、多くの場合、裁判所から「免責」を受けることです。

免責を受けるとは、裁判所に借金をゼロにしてもらうという意味で、裁判所から免責許可決定を受けることによって免責が与えられ、免責手続が行われます。

法人の場合は、破産手続の終結とともに法人自体が消滅しますが、個人の場合は破産手続をしても個人が消滅するわけではないため、破産手続とは別に免責手続を行う必要があります。

つまり、破産手続によって資産を失う代償として、支払いきれなかった部分は免責手続によって支払わなくて済むのです。

自己破産を行う人のほとんどは、借金が膨らんて苦しんでいる人たちなので、借金をゼロにしてもらうことを目的としています。そのため、破産手続と免責手続は一体のものとして同時に進められていきます。

また、自己破産して免責を受けても、清算しきれなかった借金は、連帯保証人へ請求がいきます。連帯保証人も支払えなかった場合、2人とも自己破産せざるを得ません。

破産手続を行う際に注意すべき点

破産手続を行うと、破産者本人がさまざまな影響を受けるのはもちろん、家族や連帯保証人にも少なからず影響が出ます。破産手続を行うとどのような影響が出るのか、知っておきたいポイントや注意すべきポイントをまとめました。

家族への影響

破産者本人の名義となっている住宅や車、その他大きな財産は処分される可能性が高いです。家族と同居している家や共同で使っている車を処分されると、家族は大きな影響を受けるでしょう。

連帯保証人への影響

破産手続で換価財産を借金返済に充ててもなお借金が清算できなかった場合、残額分は連帯保証人へ請求されます。

連帯保証人は債務者本人と同じ責任を負うため、債務者が破産手続をすると、代わりに支払いの義務を負います。

連帯保証人にも財力がなかった場合、連帯保証人も自己破産せざるを得ません。連帯保証人に迷惑をかけたくないという理由から破産手続を踏みとどまる人もいます。

債権者の不利益になる行動はしない

破産手続は、債権者の権利を守るために作られました。破産者の財産をできるだけ多く回収することで、債権者が得られる利益を最大限化し、各債権者に公平に配当しなければなりません。

破産手続直前に借金をする、住宅や車の名義を変更をする、特定の債権者のみに返済する、換価財産を格安で売るといった債権者の不利益になる行動を意図的に行うと、免責が認められなかったり、詐欺破産罪として処罰される可能性があります。

職業が制限される

破産手続をすると、一時的に一部の職業に就けないという職業制限がかかります。
就けなくなる代表的な職業は、弁護士や税理士などの士業、警備員、旅行業者、生命保険の募集人などです。高い信用力が必要とされる職業や、他人のお金を預かる職業が該当します。

引越しや海外渡航は制限される

破産手続をすると、破産者はいつでも出頭に応じられる態勢を整えておかなければなりません。破産手続の開始決定から終了までは移動に制限がかかるため、引越しや海外渡航には裁判所や破産管財人の許可が必要となります。

郵便物を受け取れない

破産手続を開始すると、破産者に届く郵便物は、手続終了まで破産管財人に転送されます。財産隠しなどがないかをチェックするためで、宅配業者が行うメール便などは転送させません。

従業員への給料は免責されない

事業者の場合、すでに発生している従業員への給料は、免責許可の対象外です。従業員の給料は、何よりも優先して支払う必要があり、換価財産を金銭化したら、債権者よりも優先して支払いに充てられます。

まずは弁護士に相談を

破産手続をするかしないかは、ケースバイケースで、自分では破産手続した方がよいだろうと思っていても他の方法で解決できる場合もあります。

借金問題は一人で解決するのは難しいので、まずは専門家である弁護士に相談してください。借金に関する無料相談を行っている法律事務所は多数あります。数々の破産手続をサポートしてきた弁護士なら、あなたに合った適切なアドバイスをしてくれるでしょう。

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る