便秘と下痢を繰り返す女性に増加中の「過敏性腸症候群」とは

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お腹の調子がいつも悪い気がする、便秘が続いたと思ったら下痢をする、ガスがたまってお腹が痛いなど、病院へ行くほどでもないけれど困った症状に悩まされている女性が増加しています。

一時的な症状でおさまれば良いのですが、この不調が続いて毎日をはつらつと過ごせなかったり、予期できない便意や腹痛の不安で外出などの行動に制限がかかるようであれば何らかの対策をするべきでしょう。

近年では「過敏性腸症候群」と診断される女性が増加しています。お腹の不調に悩むあなたにあてはまるところもあるのではないでしょうか?

女性に増加するお腹の不調

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過敏性腸症候群という名前を耳にしたことはありますか?少し怖そうな響きではありますが、そもそもどのような疾患なのでしょうか?

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは慢性的にお腹の調子が悪いという状態が続く大腸の機能異常の症状です。検査をしても腸の病変が認められず、腹部の不調はストレスが原因であることが多いようです。

主な症状としては、便秘や下痢などの便通異常とこれに伴う腹痛が見られます。また、便秘と下痢は交互に現れる場合があります。最近では自分はお腹が弱い体質だと思っている人の多くは過敏性腸症候群だと考えられるほど多い病気です。

先進国では成人の5人に1人がこの症状に悩んでいると言われます。お腹の不調をそのままにして外来を受診していない過敏性腸症候群の潜在的な患者数はさらに多いと思われます。

なぜ女性に増加しているの?

基本的に過敏性腸症候群の発生しやすさに男女差はありません。しかし日本では女性患者のほうが多く、年代では20代から30代の若年層で多く見られます。なぜこの症状に悩む女性が近年増加しているのでしょうか?

ひとつには女性のもつ特質があげられます。女性のほうが男性より不安やストレスを感じやすいということがあります。腸は脳と密接につながっておりストレスの影響をとても受けやすい器官であるため、女性の身体はすぐに腹痛や排便の異常としてあらわれやすいのです。

もうひとつには、ホルモンの働きが影響していると考えられています。詳しくはまだわかっていませんが、月経時の女性には半数の割合で腹痛・下痢・腹部膨満感の症状が悪化することから、過敏性腸症候群と女性ホルモンの因果関係があるとされています。

そして、過敏性腸症候群の約60%の女性は営みのあとに痛みを感じています。腹部の異常を男性よりも女性のほうが感じやすく、発見する機会も多いため受診して診断される患者数は女性のほうが男性よりかなり多いのです。

現代の多様化する生活パターンや効率重視のスピード社会でリラックスして過ごすことが少なくなってくると、敏感な女性の身体は排便パターンも不規則になります。

不規則な生活や排便パターンで腹部の症状が悪化することが女性に過敏性腸症候群が増加している大きな原因でしょう。ストレスや不安という精神症状が過敏性腸症候群の大きな引き金になっていることは先進国にこの症候群の有病率が高いことからも明らかです。

以上のことより女性に過敏性腸症候群が増加している理由は大きく2つ考えられます。ひとつは生活パターンの多様化とストレスにより男性と比べてストレスに敏感な特質をもつ女性にかかる人が増えていることです。

もうひとつは女性のほうが男性よりも症状を訴えて受診する率が高くなっているため過敏性腸症候群の患者数が多くなることがあげられます。

こんなことに困っていませんか?

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大切な行事や仕事の前にお腹が痛くなる、なにか不安や緊張を感じるとすぐにお腹が痛くなって下痢をする、いつ腹痛や下痢が来るかわからず外出や旅行に行けない・・・。

電車もトイレが心配で急行には乗れず各駅停車でしか移動できない、おならが頻繁にでて臭いが心配・・・などで困っていませんか?

過敏性腸症候群では、このように日常生活に著しい支障をきたすことがままあります。男性でも大変な症状ですが、女性にはこれに加えて「恥ずかしい」という精神的な苦痛を男性より強く感じることが多いと思われます。

常に予期できない便意や腹痛、おならなどの心配でトイレが確実に近くにある家の中でしか安心できず、症状が強い時は外に出ることすら困難になることもあるでしょう。

病気ではないとはいえ、この身体的・精神的な苦痛により日々の生活の質が低下することがこの症候群の最も危惧されることです。

日常生活での不便を嫌い外出を控えて引きこもるようになるとうつ症状という副次的なつらい状態になってしまう患者もいるため、早めに症状の改善を図る必要があります。

過敏性腸症候群のセルフチェック

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前章で述べたように、過敏性腸症候群の主な3大症状は「腹痛・便秘・下痢」です。一口にこの3症状と言っても現れ方に違いがありますのでご自分の症状と当てはめてセルフチェックしてみて下さい。

  • 腹痛を伴う便秘(便秘型)
  • 下痢(下痢型)
  • 腹痛を伴う便秘と下痢の両方(混合型)
  • 腹部膨満感(お腹にガスがたまる)
  • 腹痛は排便をすると治まる(下痢のことが多い)
  • 日によって排便の頻度が予想できないほど変化する

このうち、下痢型は男性に多くみられ、女性には便秘症状の便秘型と便秘と下痢の混合型が多くみられるようです。あくまで比率であり、もちろん女性で下痢型の症状の患者も多くいます。

女性に多い便秘型、混合型では便秘の後の腹痛とウサギのフンのようなコロコロした便が出たり、または便秘の後に下痢をするパターンを繰り返します。

腹痛を感じる部分が必ずしも一か所ではないこと、睡眠時には症状が治まっていること、下痢による体重の減少が見られないことなども過敏性腸症候群の特徴です。

また、下痢や便秘などの症状がなくても腸内にたまったガスがおならとして頻繁に出てしまい、日常生活でコントロールできない頻繁な不意なおならによる不便を感じる場合も過敏性腸症候群が隠れていることがあります。

かかりやすいタイプはある?

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過敏性腸症候群は精神的な症状から引き起こされるパターンが多く、心身症と診断を受ける場合が少なくありません。

もとの性格がストレスを受けやすい、ストレスに弱いタイプの人が発症しやすいとされます。この症候群の患者は生真面目で神経質な性格の人が多いようです。

発症は不安や緊張などによって誘発されるものが最も多く全体の約4割を占め、うつ状態に起因するものが約2割ほどです。一番大きく占める原因は職場、学校、家庭などに多かれ少なかれ存在する心理的なストレスが過敏性腸症候群の引き金となります。

外的要因としては暴飲暴食、飲酒、喫煙、不規則な生活とそれによる排便パターンの乱れも発症を誘発します。

女性ではさらにデスクワークなどで座りっぱなしの生活で運動不足となり、腸の運動が十分に行われず重度の便秘症から腸の環境が悪化することによる発症リスクもあります。

この症候群は日々の生活が不規則で食生活が乱れていたり、運動不足であることなどの外的な要因がある場合と、もともとストレスを感じやすい、またはストレスをうまく解消できない性格という内的原因により発症リスクが高まります。

小さいころから「お腹が弱い」という体質の人が社会人になって通勤や職場のストレスにさらされて発症することも多いようです。

また、かかりやすいタイプの人は症状からくる不安や緊張を増大させる傾向にあり、これが症状を重くしている悪循環に陥るケースもあるので注意が必要です。

過敏性腸症候群の予防と治療

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過敏性腸症候群は心理的な原因が大きいので予防も治療も本人のケアによるところが大きいものです。まずは自分で回復を目指す習慣を身につけ、症状が強く出てつらい時は薬物による治療も考えましょう。

セルフケアで改善しよう

過敏性腸症候群の予防法と治療法は、この症候群の主な原因が精神的なストレスによるものであることから、まずは緊張やストレスとなる原因からなるべく遠ざかった生活をすることです。

とはいえ、社会生活を営む上ですべてのストレスから遠ざかる生活をすることは非常に困難だと考えられるので、自分がストレスを上手に発散・解消する方法を普段から身につけておくことが大切です。

息抜きの時間を積極的に持つ、ぬるめのお風呂に長く入浴する、好きな音楽や映画で気分をリフレッシュする、思い切りスポーツを楽しむなど、なんでも良いので自分が一番わくわくするような方法で日々ストレスを解消していきましょう。

良い精神状態を保つためには、必要以上に深刻に考えない、「なんとかなる」といつも楽観的に物事を考える思考パターンのくせをつける、リラックス状態を保てるリラグゼーションテープを聴く、自律訓練法を行うなども有効です。

また生活習慣の見直しをして、脂っこいものを摂りすぎない、食べ過ぎ飲みすぎにならない食生活や、カフェインやアルコール、香辛料など刺激物の摂取を控える、喫煙する人は禁煙または減煙してたばこを減らす努力が必要です。

腸の状態に日ごろから気をつけて腸をいたわる食材を選んだ食生活にしましょう。お腹の調子を見ながら食生活にも気を配ります。

下痢の時は冷たいものをとらないこと、消化に悪いものや高脂肪な食品は避けること、便秘の時はバナナ・納豆など食物繊維を多く含む食品をとって自然な排便を促すことなどの工夫が必要です。

運動不足も腸の状態を悪くしますので、無理のない運動を必ず毎日適度に続けるようにしましょう。排便が促され、自律神経も安定させて腸の環境が整う効果がありますのでウォーキングなどを日々の生活に上手に取り入れていくと良いでしょう。

医学的な治療も補助的に

過敏性腸症候群はあくまでもストレスの排除や調整、生活習慣の改善が一番の治療法となりますが、つらい症状を和らげながらの回復をめざすために補助的に薬物での治療の手助けを得ることもできます。

症状が重くない場合は整腸剤を使って全体的に腸の働きを整えます。重い下痢の症状がある場合は下痢止め、便秘が長く続く場合は便秘薬や下剤を使います。

ですが、薬物を常用するのは好ましくないので服用が長期に渡らないよう気をつけ、必要に応じて医師の処方を受けるようにしてください。

心理的な要因があまりに負担が大きく、それにより過敏性腸症候群の症状が悪化する、改善しないという場合は抗不安薬や抗うつ薬などが効果的な場合があります。こちらもかかりつけ医に相談して処方してもらうか、心療内科で相談して処方してもらいましょう。

症状とうまく付き合ってサヨナラする

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過敏性腸症候群と診断されれば、命にかかわる病気ではないし、くよくよしないでうまく付き合っていこうと思うことが一番の良薬です。この症候群から他の腸の病気に移行することもないとされています。

症状が急性の炎症などではないためにすぐに治まるものではないので、少し回復に時間はかかるかもしれませんが回復を焦らないことがとても大切です。

重い症状が出てつらい時は診察を受けて処方された薬の力を借りながら、最後は自分の力で治すものだということを覚えておいてください。病院で「一生治りません」と言われた人も同じです。病院では治せない、自分しか治せない症状なのだと考えてくださいね。

過敏性腸症候群は本質的には何の心配のいらないものです。むしろ自分の生活や思考パターンを見つめ直す良い機会を持ってきてくれたと考えて、その症状と引き換えにいつもリラックスできる健康的な生き方を手に入れましょう。

あなたが健康的で安らいだハッピーな自分になれた時に過敏性腸症候群はいつの間にかいなくなっていることでしょう。時間はかかっても必ずその時が来ることを信じてくださいね。

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