乳がんは他人事と思っていませんか?実は日本では1年に4万人から5万人もが乳がんと診断されているんです。しかし40歳以上は定期的な検診を受けることが望ましいとしている国のガイドラインに反して、実際のがん検診受診率は20%程度と低いのが現状。
乳がんの発症しやすさは40代後半でピークになり、70代になってもほとんど減りません。自分で触ってしこりがないか調べているという人は多いかもしれませんが、でもそれだけでは初期の乳がんの発見には足りません。
一般に痛いと言われるマンモグラフィー検査への不安、触診への嫌悪感などがあなたにもありませんか?乳がんは早期発見によって高い確率で治療が可能な病気。
40歳を過ぎたら2年に一度は必ず検診を受けて、がんを早期発見しましょう。そのため、少しでも不安をなくすために、検査の具体例を知ってどんな検査が自分に合っているのか調べてみましょう。
では、実際の検査について見ていきましょう。検査は触診のほか、大きく分けて以下の2種類があります。
マンモグラフィーは乳房を意味する「mammo」と画像を意味する「graphy」を組み合わせた造語です。言葉の通り、乳房の画像診断を指します。乳がんの初期症状である組織の石灰化を映し出すことができます。
まだ触診では確認できない小さな石灰化組織を発見できるメリットがあります。一方で乳腺の量が非常に多い人の場合正常に撮影できないことがあり、また検査に痛みを伴うというデメリットがあります。
受診者は上半身は専用の検査着に着替えて撮影するので、ワンピースなど上下が分かれていない服は避けてくださいね。
検査では胸を出してX線撮影装置の前に立ち、乳房を台に乗せます。プラスチックの圧迫装置で乳房を台に押しつけ、4~5㎝の厚さにして撮影します。この時、痛みを感じる女性がいます。
この痛みは人によっては涙が出るほど辛かったり、ちょっとつねられた程度だったり、様々です。
胸が小さい人の場合痛みを感じることが多いと言われますが、実際には胸の大小は関係ないようです。生理の前などで胸に張りがある場合などは痛むことが多いので生理の前後は避けて、生理後1週間後ぐらいに受けるといいでしょう。
ただし、病院や検査技師によって痛みはかなり違います。女性の技師、看護師の場合は痛みが少ないとも言いますが、検査に対する恥ずかしさが軽減されるという精神的な要因も大きいかもしれません。
検査の際に「今から少し痛みますよ」「ちょっと我慢してくださいね」など細やかに声をかけてもらうことで痛みが軽減されることもあるそうです。
しかしいずれにしても痛むのは数分。長くても15分程度です。「痛い」という先入観で検査を受けず、がんの発見が遅れて一生後悔するよりはまず検査を受けることをお勧めします。
肩の力を抜いてリラックスすれば痛みも軽くなるはずです。我慢できないほど痛かったら遠慮しないで痛いと訴えてください。
マンモグラフィーではX線を使用するため放射線の被曝を心配する方も多いようです。妊娠中は避けた方がよいでしょうが、乳房だけの限定的な被ばくですので危険はまずありません。乳がんの早期発見のメリットの方が大きいと言えます。
ただし、豊胸手術を受けている方はシリコンの袋が破れる危険性があり、この検査には不向きです。また、ペースメーカーを入れている方も、ペースメーカーの破損の危険があるため避けた方がいいでしょう。
早期の乳がん発見には必要不可欠なマンモグラフィーですが、その精度は医師によっても、撮影する装置によってもかなり異なります。NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構の認定した装置には認定済みシールが貼られています。
また、マンモグラフィー読影認定医師のリストも精中機構のホームページにあるので、お近くの病院に認定医がいるか調べてから受診するのもいいでしょう。
次は乳房超音波(エコー)検査についてです。マンモグラフィーでもがんの発見率は95%程度。5%は見逃しがあるのですね。そこで超音波検査も同時に行うことがすすめられています。
こちらは診察台の上に仰向けになり、皮膚にゼリーを塗って、超音波を出すプローブと呼ばれる装置を様々な角度から当てて超音波によって乳房の内部を診察する検査です。痛みはなく、受診者の負担はかなり少なくなります。
痛みがなく、乳腺の多い女性でも正確に診断できる、放射線被ばくもないため妊娠中の方でも受けられる、手に触れない小さなしこりも発見することができるというメリットがあります。
一般に日本人女性は欧米人に比べて乳腺の密度が高く、マンモグラフィーでの撮影には不向きであるといわれています。マンモグラフィーでは乳腺も石灰化組織も同じく白く映ってしまうからです。
超音波検査では乳腺は白く映り、石灰化組織(しこり)は黒く映るため識別が可能です。特に乳腺密度が高い40歳未満の女性、閉経後で乳腺が脂肪組織に置き換わっている女性は超音波検査がお勧めです。
一方で、乳房が大きい人の場合深部の組織まで超音波が届かないことがある、マンモグラフィーで確認できる微細な石灰化は発見できない場合があるというデメリットもあります。また、しこりのできないタイプの乳がんは発見しにくいという問題もあります。
マンモグラフィー検査と超音波検査にはそれぞれメリットとデメリットがあります。同時に行ったり、1年ごとにそれぞれを行ったり、専門医に相談して、自分に合った検査を定期的に受けるのが大切です。
40代と言えば子供の教育や家のローンなど一番お金がかかる時期ですね。検査の費用について心配している人も多いのではないでしょうか。しかし検査には公的補助もあるんです。
自治体によって2年に一度40歳以上の偶数年齢の時に公的な負担で検査を受けることができます。この場合、検査の費用は0円~3000円程度。
また、2010年から厚生労働省が40歳、45歳、50歳、55歳、60歳の女性に乳がん検診の無料クーポン券を配布しています。無料クーポン券で受けられるのは問診、触診、マンモグラフィーです。超音波検査も行いたい場合は追加料金がかかります。
また、会社に勤めている女性の場合、健康保険組合の実施する定期検診のオプションとして乳がん検診を受けることができます。費用は健康保険組合によって違いますが、2000円程度となっています。
ご自分では勤めていなくても、旦那さんが会社員の場合は家族向けの健康診断を行っていることがあり、奥さんの乳がん検診に補助が出ることもあるので確認してみてください。
個人で自主的に受診する場合、病院によりますが、マンモグラフィーは5000円程度、超音波検査は4000円程度から。両方一度に受けると診察料ともで1万円程度になることが多いようです。
あなたにあてはまるケースはありましたか?どのケースでも、機会があればぜひ一度検査を受けてみてください。
マンモグラフィー、超音波検査で異常が見つかった場合、異常が悪性のものかどうかを調べる精密検査を受けることになります。
マンモグラフィーの結果は5段階にカテゴリー分けされています。
カテゴリー1は問題なし、カテゴリー2は疑わしい部分はあるけれど再検査までは必要ない要経過観察。この場合はすぐ再検査の必要はありませんが、半年に1回か1年に1回の定期的な検診が必要です。カテゴリー3以上だと要精密検査となります。
カテゴリー3の場合は念のための追加の画像検査。カテゴリー4はがんの可能性が高いとして、細胞検査や組織検査を受けることになります。カテゴリー5はマンモグラフィー上ではがん以外考えられないという結果です。
カテゴリー3の場合はがんの可能性も否定できないけれど良性の可能性が高いということですので、再検査が必要と言われてもいたずらに不安になることはありません。もちろんその中の一部は乳がんの可能性もあるので検査は受けないといけませんが。
精密検査では主に細胞診と組織診査の二つが行われます。
マンモグラフィーで発見されたしこり(石灰化)の部分に注射針を刺し、細胞を吸引して検査します。麻酔の必要はありません。また、乳頭からの分泌物も採取します。
細胞診のの結果が良性であれば要経過観察として定期的な検査を受けることになります。悪性である、またはその可能性があるということになると組織診を受けることになります。
針生検(CNB)は細胞診よりやや太い専用の針を刺してしこりの組織のかたまりを採取して行います。麻酔は局所麻酔をする場合しない場合があります。細胞診より多くの組織を取り出して調べることができます。
検査は簡単に行えて費用も5000円程度ですみます。しかし微細なしこりは正確に針を刺すのが難しいため採取が困難になります。
針生検を行うと針の通った道にがん細胞が広がるという説もありますが、たとえがん細胞が針に付着していどうしてもその量はわずかで、自然に死滅する可能性が高いと報告されているためそれほど危険視しなくても大丈夫。
マンモトーム生検は局所麻酔を行い、エコー、またはマンモグラフィーで確認しながら約4mmのマンモトーム専用の針を刺し、しこりの組織を吸引して採取、検査する方法です。入院の必要はありません。
マンモトーム生検では角度を変えながら何度か針を刺すことで、一度に複数の石灰化組織を吸引できるほか、線維腺腫など微細で良性の病変の摘出も可能です。麻酔のため痛みは少なく、傷口も1~2か月で目立たなくなります。
早期の乳がんの発見にはマンモトーム生検が有効であると答えるお医者さんが多いようです。
検査の費用は自己負担割合3割負担の場合15000円程度です。検査の後傷口をガーゼで覆い、テープで留めますが、ガーゼがずれないようにブラジャーは必ずしていってください。ガーゼを抑える専用のバンドもありますが別料金となります。
乳がんの可能性が高い場合、より正確に乳がんの状態を知るため、細胞診、組織診と同時にCTやMRIを実施する場合もあります。
このほか、悪性腫瘍が疑われる場合には腫瘍マーカーの検査、乳管内視鏡検査、乳管造影撮影などを行う場合もあります。
採取した細胞、組織の病理検査の結果が出るのは病院によって違いますが、3日から7日後です。
どうでしょう。ご自分が検診を受けるイメージはできてきましたか?
乳がんはリンパ節などへの転移の危険性はあるものの、比較的ゆっくり症状が進む病気です。転移が少なくしこりが2cm以下のステージ1までの段階で発見できれば、10年後生存率はおよそ90%と高い数字です。
転移がなく、しこりもない状態のステージ0期のうちに発見でき、早期に乳房の切除を受ければ完治も可能。乳房を温存した場合定期的な検査は必要ですが、ほかのがんに比べて予後はかなり良いと言えるでしょう。
今は何の症状もないから、しこりができたら検査に行こうと思っているのなら、それでは遅いのです。自分でわかるしこりができる前に乳がんを見つけ出すこと、それが早期発見、早期治療、そして完治につながるのです。
そのために、乳がん検診はあります。
乳がんになって辛い思いをするのはあなた、そしてあなたの大切な人たちです。早めに検診を受けて、必要なら適切な治療を受けましょう。