どうしても仕事にやる気が出ない。出社しなくてはならないのは頭ではわかっている。でも、心も体もついていかない。こんな状態で仕事をしなければならないのは、つらいことですよね。
女性の場合は、体のサイクルによってもやる気が左右されたりしますので、自分の体と上手につきあいながらやる気を維持することも大切です。せっかく仕事をするなら、はつらつとやる気まんまんの状態でいられるのが理想ですよね。
ならば、ここで仕事にやる気の出ない時、やる気にどうアプローチしていけばよいのか考えてみましょう。
そもそも我々は、なぜ仕事をするのでしょうか。働く目的、挙げられるとしたら以下の3つに大別できます。
お金のために働くのは「食っていくため」「生きていくため」。一番シンプルな理由です。モノが今ほど豊富ではない昔なら、「仕事=生きていくため」が必要十分条件でした。
周りもそうだし、自分にとっても生きていくために切迫緊急の要件です。しかし、会社員で、仕事に行けば、お給料がもらえるのはわかっているのに、なぜやる気がでないのでしょうか。
モノも豊富になった現在では、「仕事=生きていくため」が当てはまらくなりつつあります。自分が生きている理由を充実させる要請が出てきたのです。
就職活動のときに、自己分析をするのはおなじみですが、就職の目的を、「自己実現」や「やりがい」とするのも就職活動のときに教えられるものです。自己実現とは「自分の能力・可能性を最大限発揮し、『自分』になる」とされています。
いわば、就職とは「自分らしさの発揮」「能力の発揮」のためのものだというとらえかたです。仕事が合わないから辞めるなどという理由は、本人が自己実現を求めているひとつの例なのでしょう。
お金のためでもなく、自分らしさの発揮のためでもなく、周りのためを目的として働くことをモチベーションとしている人もたくさんいます。
単純に言えば、病気の人を助けたくて医者になる、看護師になる、など、周りの人を助けることを目的として仕事をする人たちです。
働くという言葉は「傍(はた:周り)をラクにする」という意味をもつ。という話がありますよね。仕事にやる気が出ないときに、思い返したい言葉です。
仕事にやる気がでないとき、そもそも自分は上の3つならどれを目的として働いているのか、振り返ってみてもいいでしょう。
お金のために働いているはずだったのに「この仕事は自分には合わない」と感じるのなら、それは自己実現のために働く必要を感じているのかもしれません。
それとも、やる気を持てない仕事にも誰かのために働くというモチベーションを発見できれば、「仕事が合わない」という思いは解決するのかもしれません。
仕事にやる気が出ない原因に、自分のなかの仕事への認識に問題があるのかもしれません。思いだしてみて下さい。あなたの父親や母親は、仕事にどうやってとりくんでいましたか。もしかすると、今のあなたと同じような状況を父と母に見ていたのではないでしょうか。
仕事に疲れ果てた機嫌の悪い父。子供のため、お金のために働きたくないのに、文句を言いながら働いている母。親の仕事への考え方は、知らず知らずのうちに子供に継承されています。
しかし、大人になってわかることですが、必ずしも親の考え方、生き方が100%正しいものではありませんよね。
「楽な仕事などこの世の中にはない」「苦労した分がお金になる」「やりたいことを仕事にするなんてワガママ」「みんな、我慢して働いている」などなど、仕事に対するネガティブな言葉はいくらでもありますし、あなたもそれを素直に信じているかもしれません。
しかし、それらについて根拠を明確に述べることはできますか。もし、仕事にやる気が出ないとういなら、根本的な原因はここにあるかもしれません。一度、自分に刷り込まれている仕事に対する態度について疑ってみた方がいいかもしれません。
例えば、「みんな我慢して働いている」という言葉にしても、「みんな」とは一体誰のことを指しているのでしょうか。「みんな」や「普通」という言葉に自分の願望をたくして子どもを洗脳するのは大人の常とう手段です。
つまり、大人が「みんな我慢して働いている」と言うとき、「みんな」とは「自分が」という意味です。しかし、それを聞いている素直な子供は、素直に「みんな」は「みんな」なのだと受け取り、仕事は我慢するものだと認識するのです。
次は、実際にやる気を出すためにはどうしたらよいのか考えてみましょう。
人は気分に左右される生き物です。仕事にやる気が出なくて困っているということは、頭では仕事に行かなくてはならないと判断しているが、気分はそうではないという状態です。
「仕事もやるつもりもないし、やる気もない」なら、働かないという選択がすぐにでてくるでしょう。仕事にやる気がでないとき、頭と気分がちぐはぐになっているので困っているのです。
再度言いますが、人は気分に左右されます。雨が降っているから憂鬱。前髪がきまらないから学校行きたくない。犬のフンを朝から踏んで気分が悪い。通りすがりの他人に爽やかに挨拶してもらったらこちらも爽やかな気分になった。
ささいなことだとわかっているのに、いったん特定の気分に支配されると、なかなかそこから抜け出せないということはありませんか。仕事にやる気が出ないのなら、この野性の暴れ馬のような「気分」をコントロールするすべを身につける必要があります。
暴れ馬のような「気分」をコントロールする一つの方法に、「身体から訴えかける」という方法があります。例えば、怒っているとき、それはエネルギーが高い状態のあらわれです。そのエネルギーを、運動するなどして発散させると、同時に怒りも鎮火します。
やる気がでないのなら、すこし散歩するなどして身体を動かすと、心が動いてスイッチが入ります。
朝起きるのがおっくうなら、せめてカーテンを開ける、暖かいコーヒーを飲むなどして、体を動かしてみたり、体を温めてほぐしてあげるなどの身体からのアプローチをとってみるのも有効です。
それから、慢性的にやる気がでない状態になっているのなら、「睡眠」に問題があるのかもしれません。夜、ぐっすり眠れていますか。快適な睡眠は精神的な安定をはかります。
昔は、働くと言うと、どちらかというと体を動かすことに従事していた人の方が多かったのです。ですので、昔は体が疲れたから夜眠る、というあたりまえのサイクルのうちに生活をおくることができたわけです。
ところが、現代の仕事は体を使うというより、頭や心を使って働く方にウエイトが大きくなっていますよね。体はそれほど疲れていないのに、日中の感情的な振れ幅ばかりが大きく、精神的な消耗が激しいという働きぶりをしているのです。
睡眠は感情の振れ幅が大きく消耗した精神も癒してくれる働きがあります。しかし、体を動かしていないとぐっすりと眠れませんよね。ですので、最近やる気がでないのなら、睡眠を見直して、少しは生活に運動を取り入れるようにしてみましょう。
気分をコントロールするもうひとつのベクトルは、「思考」です。人間は、「考える」ことができます。気分に左右されっぱなしで生きているのなら、動物と大差がありません。主観に支配される性質を持つ「気分」に、思考により客観性を取り戻しましょう。
仕事にやる気が出ないのはなぜですか。おそらく、葛藤があるのではないでしょうか。さらに言うと、みたくないものにフタをして働いているのかもしれません。気分を思考でコントロールするためにロジカルシンキングの手法を適用してみましょう。
例えば、「毎日ルーティンワークで退屈だ」ということがやる気の出ない第一義の理由だとします。ではなぜ、ルーティンワークが退屈なのでしょうか。ひとつめのなぜを投げかけてみましょう。
それは「自分のスキルがあがってきて、仕事の内容と釣り合わない」のかもしれません。もしくは、「ルーティンワークの意義を見いだせない」のかもしれません。
ではなぜ「自分のスキルがあがってきて、仕事の内容と釣り合わない」ことがやる気のない理由となるのでしょう。「もっとスキルに釣り合う仕事がしたい」と思っているのかもしれません。
でも、それを打開する自分もいないし、周りも引きたててくれないからルーティンワークに甘んじることとなっているとします。では、なぜ自分で上司に相談するなりして打開しないのでしょうか。
もしかしたら「上司が相談し辛い」人なのかもしれません。なぜ上司が相談し辛いと感じているのか、それは、「上司が威圧的だから」かもしれません。
なぜ上司が威圧的だと相談し辛いのか、それは「父親をイメージさせるから」かもしれません。ここで出せる答えは、「客観的に見れば、上司=父親ではないので、思い切って上司に相談してみる」でもいいでしょう。
述べたことは一例ですが、こうして、やる気の出ない原因の理由につぎつぎとなぜと問いかけることによって、思考により解決を探るのです。
最後にやる気の出ないときのためのコワザを紹介します。
姑息なワザとも言えますが、かなり効果があるのが「5分だけ作戦」です。子供のころ、宿題をやらなければならないのに、なかなか手をつけられずダラダラして、結局母親に激しく叱られてからやっと手をつけたなどという経験はありませんか。
たかが宿題、やり始めたらすぐ終わるものだとわかっていても、スタートするのはなぜかハードルが高い。理由のひとつが、「準備」だったりするのです。机の上が汚いから片付けるのが面倒。文房具を出す、宿題のノートを出すのが面倒。
今までだらだらテレビを見ていたところから、わざわざ机を片付けたり、文房具を準備したりするという新たな局面に入ること。実際には簡単なことでも、心理的にはとても面倒な気がするのです。なぜなら脳は新しいことを嫌うからです。
たかが、宿題の文房具を取り出す。それだけでも、今やっていることと違う局面なら脳はそれを嫌うのです。「5分だけ作戦」は、そんな「着手」へのハードルを下げる作戦です。宿題がトータルで20分くらいかかりそうなら、自分に交渉してみるのです。
「5分だけでいいからやってみない?5分やったらお菓子食べても、テレビ見てもいいよ」。もうひとりの自分が承諾します。「まあ、5分だけならやってやってもいいけど」。しかし、人間は、一旦着手したものを途中で中断されることを嫌います。
5分だけ宿題したらいいと思っていたのに、いざ文房具を準備し、少し手をつけたら、「全部終わらせよう」というやる気が出てくるのです。
結局、自分を動かすために自分と「5分だけ」という約束をするわけなのですが、結局5分以上すすめることになるのはわかっているので、自分をだますかたちになります。
仕事にやる気が出ないときの、やる気へのアプローチ法を考え、根本的に仕事の意味を見つめることや、思考や体へアプローチする技術、はたまたコワザ的アプローチなどをお伝えしました。
これらのアプローチで、気分に支配されず、自身が気分の主となってもらえたらと思います。