国内では、一般的に、育児に関しては「女性がやるもの」という意識がいまだ根強く残っています。実際、「お父さんが育児に関わらない」よりも「お母さんが育児に関わらない」方が重大な問題だと考える人も少なくないでしょう。
育児の現状を見てみると、たとえ共働きの夫婦であっても育児はお母さんが担当することが多いとされており、お父さんはあまり育児に参加しない傾向があることも報告されています。このように、育児に関しては男性よりも女性の方が主となって関わっている実態が日本にはあります。
そして、育児に関するWEBサイトや育児本を読んだり、専門家の話を聞いても、「お母さんが育児に関わることが子どもの健全な成長のためには重要です」とは言われますが、「じゃあ、お父さんは?」という疑問に答えてくれないことも少なくありません。
それでは、世間でも言われるように、お母さんが育児に関わることが最も重要で、お父さんが育児に関わる意味は無いのでしょうか?やはり、育児はお母さんがした方がいいのでしょうか?本記事では、お父さんが育児に関わると子どもの成長にどのような影響があるのかについてご紹介いたします。
まず、お母さんが子どもの健全な成長に与える影響については、意見はほとんど一致しているでしょう。子どもは、お母さんに抱かれることで愛情を感じ、他人を愛せるようになったり、人間関係を上手く築けるようになったりします。
では、お父さんはどうでしょうか。確かに、お父さんが子どもの成長に与える影響力は、お母さんが持つほどには大きくありません。ですが一方で、お父さんはお母さんより小さいながらも、確実に子どもの成長に影響を与えるとも言われています。
例えば心理学の研究では、お父さんが育児へ関わっていればいるほど、将来、子どもが大人になった時の共感性が高いことが分かっています。つまり、お父さんが育児に関わると、子どもは人の気持ちを分かってやれる人間になるのです。
他にも、子どもには生まれつき社会的に良くない行動を取りやすい性格を持つ子どもたちがいるのですが、そうした性格を持つ子どもであっても、お父さんが積極的に育児に参加すると、子どもは社会的に良くない行動を取りにくくなることが分かっています。
このように、相対的にお母さんより影響力は小さいとされながらも、確かにお父さんが育児に参加することは、子どもの成長に大きな意味を持っているのです。こうしたことから「育児は女性がやるものだから」と言わずに、積極的にお父さんにも関わってもらった方が良いと言えます。
一方で、お父さんの子どもに対する影響は、こうした直接的な影響よりも間接的な影響の方が重要だとも言われています。つまり、お父さんの育児における最も大切な役割は、「お母さんの育児をサポートすること」であるということです。
産後の女性は、ただでさえホルモンバランスの乱れなどにより、精神的にも肉体的にも体調を崩しがちです。それに加え、育児のストレスなどが加わってくると、お母さんも「子どもには優しくしなければ」と頭では分かっていても、常に子どもに優しくしてばかりもいられません。
そんな時、お父さんがお母さんに対して「大丈夫?」とか「僕が変わってあげようか?」と一言声をかけてくれるだけでも、お母さんの心の状態は大きく改善されるでしょう。すると、お母さんはまた子どもに対して優しく接してあげられるようになるはずです。
子どもの健全な成長のためには、こうしたお母さんの笑顔が大きな役割を果たしています。ですので、こうしたお父さんのお母さんへのちょっとしたサポートが結果的に健全な子どもの成長へと大きな影響を与えるのです。
このように、お父さんの育児における役割は必ずしも、直接子どもに対して働きかけるものばかりではありません。育児に疲れた、あるいは育児で困っているお母さんの精神的なケアをしてもらうことで、それが結果として、子どもに対して直接与える影響よりも大きな結果を残すことになります。
「育児は女性がやった方が子どもの成長にも良い」と言われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、やはりお父さんに直接的にも間接的にも育児に関わってもらった方が子どもの成長には良いので、出来る限り積極的に関わってもらった方がいいでしょう。
そもそも、「育児はお母さんがやらなければならない」という価値観も世界レベルで見れば、それほどメジャーなものではありません。例えば、アメリカではベビーシッターを雇って日中の育児はお母さん以外の他人がやっているという事も珍しくありません。
他にも、アフリカのとある部族などでは、お母さんがほとんど育児に参加せず、お母さん以外の人が積極的に子どもの育児に関わっていることも報告されています。当然、この子どもたちがお母さんに育てられた子どもに比べて不健康に育っているわけではありません。
むしろ日本のように、お母さんが常に子どもを抱いて育てるという文化は世界でもそれほどメジャーなものではないのです。こうした育児方法が決して悪いわけではありませんが、だからといって「女性の親だけが育児をしなければならない」と言うのは間違っていると言えるでしょう。
繰り返しになりますが、「育児は母親がやるものだよ」と周囲の人からは言われるかもしれませんが、こうした価値観は世界的なものではありません。こうしたことを知っておけば、「私が育児をやらなければ」というお母さんたちのプレッシャーも少しは楽になるのではないでしょうか。
日本では、いまだに「育児は女性がやるもの」という意識が強く根付いており、実際に育児のほとんどはお母さんがやっているという実態も報告されています。また、お母さんが育児に参加する意味は紹介されても、お父さんが育児に参加する意味については触れられないことも数多くあります。
ですが、こうした状況は「子どもの健全な成長」のためには、必ずしも良い状況とは言えず、むしろお父さんに積極的に育児に関わってもらう事で、子どもは他人の気持ちが分かってやれるようになったり、悪いことをしにくくなったりするのです。
いずれにせよ、世界的にみても育児は決して「お母さんがやらなければならないもの」ではありません。子ども自身の成長のためにも、お父さんだけでなく、周囲の人にも手伝ってもらえるのであれば積極的に手伝ってもらうようにしましょう。