女性の大切な臓器、子宮。とくに目立った症状がなくても意外と異常が潜んでいることがあります。現代の女性の4人に1人とも言われる「子宮筋腫」。思春期の若い女性に発症することはまれですが、成熟期の妊娠・出産を考えている世代には大きな問題になることがあります。
何の症状もないし、不便を感じないから大丈夫と思っていても筋腫は無症状で育っていくことがあります。正しい知識を持って大切な自分の女性としての体の声を聴いてみましょう。
婦人科を訪れる女性の1割ほどに筋腫はみとめられ、年代的には40代が最も多くみられます。若い女性にも発生しますが、閉経後には退縮して小さくなるものです。
子宮筋腫ができる原因は確定的にわかってはいませんが、思春期前と閉経後の女性に発症することが極めてまれなことから確実なのは女性ホルモンの影響で筋腫を発育させているだとろうということです。
筋腫の発育にエストロゲンという女性ホルモンが作用しており、女性ホルモンの分泌が盛んな成熟期の女性には筋腫が大きく育つ可能性が高くなります。そして卵巣から女性ホルモンの分泌が終わる閉経した後は、子宮の大きさとともに筋腫も縮小していきます。
良性の腫瘍とはいえ、増えたり大きくなったりすることがあるのでいろいろな症状が目立ってくることもあります。この筋腫が10kgほどのゴムボールのように大きくなって搬送された女性もいるほどです。
この筋腫ができた場所により、子宮の壁内にできたものを「粘膜下筋腫」、子宮の筋肉にできたものを「筋層内筋腫」、子宮の外側に向かってできたもの「漿膜下筋腫」と大きく3つに分けられています。
このうち筋層内筋腫が一番発生数が多く全体の60~70%を占め、次に漿膜下筋腫が20~30%、粘膜下筋腫は5~10%の割合で発生しています。
子宮筋腫ではどんな症状が出るか、どの程度の症状かは筋腫の大きさ、発生した部分、成長する方向などによってさまざまです。一番多いのは月経痛と月経の量が多くなることです。その他には腰痛や頻尿(おしっこの間隔が狭くなる)などがあります。不正出血が見られる場合もあります。
子宮に筋腫ができたからすぐに不快な症状がでるというわけではありません。中には無症状のまま進行して、気付いたら多量の出血をしてしまって貧血が起こって病院へ、ということもあるほどです。
子宮の内側に出来たものは症状が比較的強く表れ、外に出来たものは相当大きくならないと自覚症状として現れません。
筋層内筋腫と漿膜下筋腫に比べて粘膜下筋腫の場合、多くは不正出血が見られます。他にも過多月経や貧血症状が見られます。また子宮を支える靭帯に筋腫が発生した場合は腰痛が起きやすく、膣内まで広がった筋腫では下腹部痛が見られます。
また子宮体部に出来た筋腫と比べて、子宮頸部にできた筋腫では周囲にある膀胱や尿管、直腸を圧迫することがあるので頻尿、排尿困難、便秘などのいわゆる「おしものトラブル」の原因になることが多くあります。
そして卵管付近にできた筋腫は不妊症の大きな原因となりますので、自覚症状がなくても妊娠を望む女性は早めに子宮の検査を受けておく方が良いでしょう。
ほとんどは無自覚のまま無症状のままで過ごし、子宮がん検診や妊娠をきっかけに発見されることが多い子宮筋腫。実はとても簡単な検査で診断がつくのです。
通常は婦人科の内診です。腫れて硬くなったこぶ(腫瘤・筋腫結節)に触れれば、子宮筋腫の診断が下されます。小さい筋腫は見つけにくいこともありますが超音波(エコー)検査などが診断に有効です。
子宮筋腫の治療は筋腫の大きさや女性の年齢などによって方法が変わります。主な治療法は子宮や筋腫を摘出する手術療法と薬物で症状を抑える保存療法の二つです。更年期と呼ばれる年代の女性であれば重度でなければ閉経に至るまで経過観察となることもあります。
若い世代では筋腫自体は発育が穏やかとはいえ、増大する可能性があるので子宮筋腫の治療は手術を行うか投薬をする治療法をとるのが一般的です。しかし筋腫があるからといってすべて手術が必要というわけではなく、筋腫が比較的小さく症状が重くない場合は定期健診で様子を見る場合もあります。
手術を要する目安として、筋腫の大きさがこぶし以上のとき、周りの臓器を圧迫することにより下腹部痛などの症状が出るとき、月経や不正出血などの出血傾向が強まり貧血を認めるとき、筋腫が不妊、早産、流産などの原因になると考えられるときなどがあります。
手術には子宮全体を取ってしまう子宮全摘術と、子宮の体部だけを取る子宮膣上部切断術、筋腫部分だけを取る筋腫核出術があります。将来的に妊娠を望む女性や子宮温存を希望する女性には筋腫だけを取り除く手術が行われますが、小さくて見えなかった筋腫が育ち数年後にまた大きくなった筋腫を取る手術を行うことがあります。
子宮全摘出をした場合、月経がおこらなくなり妊娠することもなくなりますがすぐに更年期症状がでることはありません。それ以上に、子宮は女性ホルモンの分泌器官ではないため「女性らしさがなくなる」などと心配する必要は全くありません。むしろ筋腫の再発や子宮がんなどのトラブルと無縁になるメリットもあります。
その他に超音波で筋腫を縮小させる方法や、子宮の血管をふさいでしまう手術などの治療法がありますが、これは保険適用外のため高額な治療法なので良く検討してください。
手術をするための入院期間は、健康体であれば術前3日、術後2~3週間ほどです。仕事へ復帰するのは個人差がありますがおよそ1か月~1か月半を見ておきましょう。
薬を使う治療では、毎日の点鼻薬(噴霧して鼻から吸入するスプレー薬)や1か月に1回の注射などで閉経状態にする治療を行います。ただし、この方法では副作用が出る場合や更年期障害のような症状が出てしまうことや、投薬をやめると筋腫がもとに戻ってしまうので手術前や閉経までの対症療法として行われます。
もうひとつの薬の治療では経口避妊薬(ピル)で症状を和らげる方法もあります。更年期障害のような症状が出ず最近のピルは女性ホルモンも含有量が少ないため筋腫を大きくしないというメリットがありますがいつまで常用するかが問題点です。
東洋医学では子宮筋腫も体全体をつかさどる神経系を痛めつけるストレスが原因だとされる向きがあります。最近では西洋医学でも、子宮筋腫の発生や成長が女性ホルモンと密接な関係があることから、ホルモンバランスの乱れを引き起こす現代の食生活の乱れや環境汚染などが子宮筋腫を増加させる原因という見方があります。
人間の体は、呼吸や血圧など生命維持に欠かせない働きを司る自律神経系、ホルモン分泌を司る「内分泌系」、外部からの異物や病原菌から体を守る「免疫系」がそれぞれバランスよく働くことではじめて健康な状態を維持できます。
しかし、急なストレスを受けたり、または長年蓄積されているストレスが重なるとこの体の命令系統のシステムが故障してしまい、どこかに「病」として症状が現れてしまいます。このシステムが壊れた時に最も大きく不調が現れるのが女性の場合子宮や卵巣でしょう。
骨盤という限られたスペース内に膀胱や子宮、卵巣、尿道、直腸などという複雑な臓器が すき間なく存在しているため、うっ血しやすくなります。ストレスを受けると人間の体はさまざまな悪影響を受けますが中でも血流障害が多くのトラブルを引き起こします。
血流が滞りやすいところにはまず「冷え」がおこり、その冷えと血流障害によって臓器は異常を起こしやすくなるというわけです。ということはストレスを解消して血液の循環を良くして冷えをとることで子宮筋腫の予防と改善につながると言えるでしょう。
繰り返しますが子宮筋腫自体は「良性」な腫瘍です。心配しすぎることはありません。もう診断されて改善したいかたも、これから予防したいかたも簡単にできる子宮筋腫の予防法と改善法をお試しください。
冷えは万病のもと。子宮筋腫も同じです。次の方法などで「温活」してまずは下半身を温めてください。
体を外から温める方法をマスターできたら、生活習慣を見直して内側から血の巡りの良いポカポカの体づくりを心がけましょう。
言うまでもないことですがストレス解消と体を温めて血流を改善することで体は治癒力をフルに発動できますが、「やりすぎ」は禁物です。やりすぎると免疫力を落として逆に不調を招くことになりますので適度に行いましょう。
その他のおすすめとしては民間療法ですが、体全体を整えて温め、血行を促進する効果があるお灸、ツボ療法などもおすすめです。いずれも専門家に施術してもらうと良いのですが、自分でも簡単に行える健康法なので試してください。お灸やツボグッズは薬局、量販店などで購入できます。
見落とされるほどの小さいものを含めればほとんどの女性が経験するという説もある子宮筋腫。知ってしまえば怖くありません。すべてが手術の対象にならないことも、経過観察で良い場合もあるということもお分かりいただけたと思います。
もし、思い当たる症状がある場合や妊娠を考えている場合、またはまったく症状がなくとも自身の健康を守るために女性のための子宮検診を年に1回は受けて健やかに輝く毎日を過ごしましょう。