近ごろ、熱中症の症状を訴える子どもが、増えてきているような気がしませんか?
たしかに、二酸化炭素などのような温室効果ガスが増えたせいで、地球の温暖化が進んでいることが、心配されていますよね。そのせいで、気温が上がったというのも原因の一つかもしれません。
テレビを見ていると、小学校や中学校、高校などで、
「何人もの子どもたちが、頭痛や吐き気などの体の不調を訴えて、近くの病院に運ばれ、熱中症の手当てを受けました。」
なんていうニュースが、放送されることがあります。
なんだか、最近、増えてきている気がしませんか?
私が子どもの頃も、夏休み前の終業式などで、校長先生の長い話の最中に、気分が悪くなってしまい、保健室に運ばれる友達がいました。
けれども、最近のように、こんなに頻繁に、そして、こんなに多くの子どもたちが熱中症の症状を訴えることは、無かったような気がします。
たしかに、子どもは、体温を調節する機能が未熟なため、熱中症にかかりやすいとされています。
体温が高くなると、人の体は、体温を一定に保つために、皮膚の表面の血管を拡張させて、熱を外に逃がそうとしたり、汗をかいて、体温を下げようとしたりします。そのため、汗をかく能力が低下すると、体温を調節する機能も低下してしまうのです。
そして、最近、しっかりと汗をかくことができない子どもが増えてきていることが、心配されているのです。
日本では、昭和30年代ごろから、一般家庭にクーラーが普及し始めました。その後、経済の発展にともなって、人々の生活水準が向上し、いまでは、各家庭に1台どころか、家じゅうの部屋すべてに1台ずつクーラーがあるという家庭も、珍しくなくなりました。
このような快適な空調の中で、生まれ育った子どもたちは、しっかりと汗をかくことが、できなくなってきているのだといいます。
それは、皮膚に存在する汗腺の機能が発達しないまま、成長してしまったからなのだそうです。
発汗は、体温調節に必要な、大切な体の機能ですね。汗をかくと、その汗が蒸発するときに、体の熱を奪うので、体温が上昇してしまうのを防いでくれるというのは、良く知られています。気化熱という言葉をご存知の方も、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
子どもたちを、しっかり汗がかけるようにしてあげるためには、どうしてあげたらいいのでしょうか?
それは、私たち日本人だけに限ったことではなく、地球上の寒い地方で育った人は、機能する汗腺の数が少なく、暑い地方で育った人は、機能する汗腺の数が多いのです。
クーラーやエアコンが普及した現代では、たとえ、真夏であっても、室内にいれば、快適な温度環境で、生活できますよね。けれども、その快適な温度環境のせいで、子どもたちは、幼少期に汗をかく大切な機会を、たくさん失ってしまったのかもしれません。
その結果、現代の子どもたちは、その親世代の人と比べると、きちんと機能している汗腺の数が、はるかに少なくなってしまったのだといいます。
しっかり汗をかくことができないと、当然、暑さには弱くなるでしょう。体温が高くなっても、自分で体温調節ができなくなってしまうため、熱中症にかかりやすい子どもが増えてきているのではないでしょうか?
最近では、一般家庭だけでなく、職場はもちろん、お店やレストランなど、屋内で、クーラーのない所を探すほうが難しいくらい普及していますね。
そして、驚くことに、幼稚園、小中学校、高校などでも、教室にクーラーを設置するところが増えてきているのです。
ヒートアイランド現象や、温暖化など、環境が変化していることを考えると、仕方のないことなのかもしれませんが、このまま、クーラーの中で、快適な生活を続けていると、せっかく機能していた汗腺も、退化してしまうのだといいます。
それは、子どもに限らず、大人にも、言えることなのです。
夏。外は、うだるような暑さです。子どもに限らず、大人だって、クーラーの良く効いた室内で、快適に過ごしたくなる気持ちは、よくわかるのですが、紫外線対策や、熱中症対策を、しっかりとして、たまには、子どもと一緒に、外に出てみませんか。
屋内でも、家族みんなで、体を動かして、ちょっと汗をかいてみるのも、いいですね。
少し大きくなった小学生、中学生などの子どもたちの場合、汗腺の機能が鈍ってしまっていることもあるので、汗の代わりに、霧吹きなどを持参して、体に吹きかけてあげると良いそうですよ。