「美肌ケア」というとコラーゲンやヒアルロン酸配合のクリームを塗るということが主流になっているようですが、中国医学の観点から言うと、上から何か塗っただけでは肌のケアとしてはあまり効果があるとは言えません。
中国医学では、肌の健康はあくまで内臓の健康や、全身のバランスを整えることにより保たれると考えるからです。
そこで今回は、中国医学の理論による内臓と肌の関係をご紹介し、そこから内側から美肌をもたらすためのセルフケアを考えてみたいと思います。
中国医学では、自然にある要素を「木・火・土・金・水」の5つのカテゴリーに分ける「五行学説」を人体にも当てはめ、内臓や体の各所の組織・器官などを5つに分け、それぞれのカテゴリーに属するものは有機的に関連していると考えます。
全ての組み合わせをご紹介するわけにはいかないので、ここでは五臓六腑と体の各部のつながりだけをご紹介しましょう。
火-心-小腸-脈
土-脾-胃-肌肉
金-肺-大腸-皮毛
水-腎-膀胱-骨
以上のような関連があります。
一部日本語の意味と違う部分がありますので解説しておくと、「筋」は日本語では「腱」、「肌肉」は日本語では「筋肉」となり「はだと肉」という意味ではありません。日本語で言う肌は「皮毛」に属します。「皮毛」は皮膚と髪の毛以外の体毛です。
このような理論から、中国医学では皮膚は肺と大腸とに密接な関連があると考えます。
肺には「気」と「津液(しんえき)」を全身にいきわたらせる「宣発」という働きがあります。
皮膚の健康を保つというのは、単にきめ細かく美しい肌にするというだけではなくて、気候や気温の変動に対応して汗腺を開け閉めしたり、現代医学で言う表皮常在菌によるバリア機能を正常に保つことで外からの感染などを防ぐことも指します。
逆に、肺の働きが悪くなると「宣発」機能がうまく働かずに、栄養や水分が皮膚に届けられず、様々な肌のトラブルが発生することが考えられます。
肺は大腸とも密接な関わりを持っています。大腸は肺が持つもう一つの作用「粛降」によって便を排泄することができます。「粛降」というのは不要なものを下に降ろしてその通り道をきれいにするという働きです。
便秘が皮膚の健康にも影響するというのは、中国医学以外でも言われていることですが、その関連を中国医学で説明すると、便秘を起こす大腸の不調が間接的に皮膚の健康にも影響しているということになります。
肺と大腸と皮膚の関わりを簡単ながらご紹介しました。ごく大雑把にいえば、つまりは肺と大腸の健康を保つことが内側からの美肌につながるということがお分かりいただけたと思います。
肺は呼吸を司る大切な臓器ですが、壊れやすい臓器なので多少甘やかし気味にしてあげる必要があります。
肺には外気が直接入りますので、汚れた空気や寒冷刺激なども極力避けたほうがいいでしょう。寒い時期に「健康のため」とジョギングなどをするのは、肺に負担をかけるとともに冷たい空気を大量に吸い込みますので肺の健康という観点から言うと全くの逆効果です。
ただし、甘やかし過ぎでは却って機能が落ちてしまうので、ウォーキングなどのあまり息を切らせずにできる運動でしっかり肺を働かせるということも大切です。
胸や背中の筋肉が緊張していると肺がおさまっている胸郭が広がりにくくなるので呼吸を阻害することになり、間接的に肺の健康に影響します。ストレッチで胸や背中を伸ばしてあげるといいでしょう。
女性の場合、やはり下痢症よりも便秘症のほうが多いのではないかと思いますので、まず便秘を解消するというのが大腸の健康を保つ第一となります。
便秘の解消のためには運動や適切な水分摂取などの方法がありますが、重要なのは腸内環境をいわゆる「善玉菌」優位に保ってあげるのが一番です。
オリゴ糖と食物繊維を多く含むものとしては大豆・バナナ・アスパラガス・ごぼうなどがあります。
とはいえ、そればかり食べていればいいというものでもありませんので、そうした食品を取り入れつつも、動物性蛋白質や炭水化物もバランスよく食べるようにしてください。
腸内環境を健全に整えると、便秘症ばかりでなく下痢症の改善にも役立ちます。
このようにして、肺と大腸を健全に働かせてあげればおのずと美肌も得られるはずです。
しかし、頑固な便秘や背中周りの凝り、呼吸器の不調、或いはアトピーなどセルフケアだけではなかなか解消できない症状があるときは、漢方専門の薬剤師さんや鍼灸師などに相談してください。