【骨粗しょう症予防】骨をしっかり保つために知っておきたいこと

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“骨粗しょう症は高齢女性の多くに見られる病気です。必ずしも女性だけがなるわけではありませんが、骨粗しょう症の患者さんの8割は女性だとも言われており、女性のほうがより気をつけるべき病気であることは間違いないでしょう。

今回は西洋医学・中国医学両面から骨粗しょう症の原因を探り、対応策を考えてみたいと思います。

骨粗しょう症の症状


骨粗しょう症の主症状は骨が「粗く」「鬆(す)が入った」状態になるということです。鬆が入るというのは、例えば大根を長く置いておくとところどころに穴があいてくるという状態のことです。つまり骨がスカスカになってしまうということですね。

では、骨がスカスカになるとどうなるか?一番怖いのは骨折です。骨がもろくなると足腰が弱くなりますから、転びやすくなります。転んだ時に軽く手を着いただけで骨折してしまうなどの危険が考えられます。

さらには、背骨がもろくなることによって、自分の体の重さを支えられず、つぶれるように背骨の椎体(背骨を構成しているパーツ)が折れてしまうという可能性すらあるのです。

骨折までいかなくても、背骨が重さを受けて縮んでいくことにより、脊髄から伸びている神経を圧迫して、手足のしびれ、腰痛などが起こる場合もあります。

西洋医学から見た骨粗しょう症の原因と治療

骨の新陳代謝

まず原因を探る前に、骨の新陳代謝について説明します。

人間の骨は産まれたときから壊すことと作りなおすことを繰り返しています

骨髄から作られる破骨細胞は骨を溶かして吸収することで骨を壊します。一方骨芽細胞は壊れた部分を新しく作り直します。こうして骨は新陳代謝を繰り返すことで健康を保っているのです。

原因1 腸の機能の低下

骨をかたち作るにはカルシウムが必要なのは説明するまでもないと思います。ところが、加齢により腸の機能が衰えるとカルシウムの吸収率も下がってしまいます

建材がなければ家は建たないように、カルシウムという材料がなければ骨は再生されません。しかし、骨の破壊のほうは続いていきますのでどんどんもろくなっていきます。

原因2 女性ホルモンの分泌低下

女性は閉経すると女性ホルモン・エストロゲンの分泌量が低下します。エストロゲンは破骨細胞の活動を抑えるとともに骨芽細胞の活動を促す働きがあります。それが低下することで破骨細胞の活動のみが続いてしまうために骨がもろくなります。

原因3 過度な美白志向によるビタミンD不足

紫外線は肌の美白の大敵ということで女性には避けられるものですが、カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、皮膚が紫外線を吸収することによって生成されます。

日傘を差す程度ならともかく、指先まで覆った上に顔全体もメッシュ状のものをかぶって完全防御しているような人は紫外線の吸収量が足りずビタミンDも作られません。ビタミンDが作られないと骨の材料であるカルシウムも吸収されにくくなります。

西洋医学的な治療

西洋医学での骨粗しょう症の治療は投薬が主となります。カルシウムやビタミンD、エストロゲンなど足りなくなった栄養やホルモンを補うものと、破骨細胞の活動を抑制するビスフォスフォネート剤などが投与されます。

それ以外にも、骨粗しょう症の増加に伴い、骨密度を上げる薬などの新薬も開発されています。

中国医学から見た骨粗しょう症の原因と治療

原因1 腎虚

「腎虚」というと男性が過度な性行為によりなるものというイメージを持っている方もいるかもしれません。確かにそれも腎虚の一部ではありますが、全てではありません。

中国医学では「腎」は生命の源となるエネルギーが貯蔵されているところであり、骨を成長させその健康を保つ機能を持つと考えられています。

腎虚になると足腰の力が萎えて骨が弱り、女性の場合は生理が不順になったり閉経が早まったりします

原因2 脾虚

「脾」というのは、西洋医学の解剖学で言う脾臓とは別のものです。中国医学で言う「脾」は、胃腸の消化吸収能力をコントロールし、吸収された栄養を必要なところに運んであげるという働きを持ちます。

脾虚、つまり脾の働きの衰えはそのまま消化吸収能力の衰えにつながりますので、カルシウムに限らず体に必要な栄養成分をきちんと吸収できなくなるということになります。

中国医学的な治療

1.補腎

文字通り「腎」を補う治療です。鍼灸には補腎の治療法がいくつかあり、漢方薬にも補腎薬がいくつかあります。漢方薬を選ぶ場合、どの補腎薬が合っているかは専門家による判断が必要です。

自己診断で間違った薬を買うことがないように、漢方を専門に勉強した薬剤師さんに相談するのがいいでしょう。通常の薬局ではなく「漢方薬局」の看板を掲げているところで相談することをお勧めします。

2.健脾

「脾」の働きを健全にすることで、栄養の吸収能力を高めます。これも鍼灸でも漢方薬でも対応できますが、理想的なのは鍼灸と漢方薬を併用することです。

日常生活でのケア

骨粗しょう症はまずならないように予防することが大切です。そして、なってしまったら早め早めに対処することが大切です。

専門家の治療を受けることも重要ですが、日常的に自分自身で気をつけることで予防したり、症状の進行を遅らせることはできます。

ただし、こうした日常的なケアは長期間継続しなければ意味がありません。特に女性の場合、一生続けるぐらいの覚悟で取り組んでいかなければ、骨粗しょう症から身を守りきることは難しいでしょう。

栄養補給

まず大切なのは骨の材料となる栄養素の補給です。カルシウムは当然として、ビタミンDの補給も大切です。

また、骨はカルシウムのみでできているわけではありません。カルシウムでできた骨の構造の中はコラーゲンで支えられています。よく言われるのは、カルシウムはコンクリートでコラーゲンは鉄筋であり、双方が揃って強力な骨になるということです。

ですから、コラーゲンの元となるたんぱく質も摂らなくてはいけません。

カルシウムは牛乳や魚に多く含まれるということは広く知られていることなので、詳細な説明は略します。

ビタミンDは動物性のものは魚、植物性のものはキノコ類、特にきくらげに多く含まれます。

コラーゲンはよくサプリメントやドリンクが売られていますが、コラーゲンを飲んでもコラーゲンとして体内で再生されるわけではありませんので、肉や魚などでたんぱく質を補給するとともに、体内でのコラーゲン合成に必要なビタミンCを含む緑黄色野菜や果物などを摂るようにすれば、コラーゲン配合を謳った高い健康食品を買う必要はありません。

大豆イソフラボンについて

女性ホルモン・エストロゲンに似た働きをする「大豆イソフラボン」の摂取によって、骨を作る骨芽細胞の働きがよくなることが期待できるという意見もあります。

ただし、食品安全委員会は大豆イソフラボンの1日の摂取量を70~75mg程度と定めていますのでサプリメントでの摂りすぎは要注意です(よく言われる30mgは、食事以外にサプリメント等から摂取する「上乗せ」の制限です)。

とはいえ、わざわざサプリメントなどで補給するのではなく、納豆や煮豆などを食べるようにすれば基準値を越える心配はまず考えられません。

※大豆イソフラボンの摂取により骨密度は変化しなかったという研究もあるので、あくまで栄養補助的なものとして考えてください。

適度な運動

宇宙飛行士の若田光一さんが宇宙空間で運動している映像が記憶に新しいという方も多いのではないでしょうか?

実は重力がかからない宇宙空間では骨からカルシウムがどんどん放出され、骨粗しょう症の患者さんの10倍もの速さで骨が減少するそうです。

若田さんは、運動と骨粗しょう症治療薬・ビスフォスフォネートの摂取により宇宙空間で骨量が保てるかという実験もしていました(JAXAのサイトを参照http://www.jaxa.jp/article/special/experiment/ohshima01_j.html)

運動により骨に適度な負荷をかけてあげることは重力がある地上でも大切です。骨に負荷がかかることによって、骨の新陳代謝が促されます。

骨の新陳代謝を促す適度な運動としてはウォーキングがお勧めです。息をきらすような早足ではなく、普通の歩速で1日15分から30分。余裕があれば1時間ほど歩けば骨に対して適度な負荷となり、全身の血流をよくすることにもつながります。

また、エスカレーターやエレベーターにはなるべく頼らず、階段を上り下りするというのも有効です。ただし、膝痛がある方や骨粗しょう症に実際になっている方はあまり無理をしないでください。

ジムでのマシントレーニングも有効ではありますが、最低限の医学知識を持ち、年齢に合わせた指導ができるトレーナーがいるところを探してから行うようにしてください。

過度の美白対策をやめる

上記のように、全身くまなく覆って美白対策をすることでまったく紫外線を浴びずにいると、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが体内で生成されず、不足してしまいます。

ビタミンDは食品やサプリメントからも補給できますが、体内で作る分があったほうが効率的なのは言うまでもありません。

とはいえ、1日中紫外線をあびなくてはならないということではなく、1日に10分から20分程度日光に当たるようにすれば問題ありません。

骨粗しょう症は女性に多い病気とはいっても、治療法や自分でできるケアはたくさんあります。日頃から適切な栄養摂取と適度な運動をする習慣をつけていれば骨粗しょう症の予防だけにとどまらず、ダイエットや健康増進の効果も期待できます。

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