2013年、アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが乳がんを患う可能性が高いことを理由に、乳がん予防のために手術を行ったと発表したことが話題となりました。
乳がんは女性であることの象徴とも言えるおっぱいの病気ですから、病に侵されたと分かったら誰しも「完治するだろうか」「おっぱいが無くなってしまうのだろうか」と不安に思うことでしょう。
よって今回は、乳がんと乳がんに関るお金(治療費用)の話を中心に進めていきます。
がんには胃がん、子宮がん、直腸がん、肺がんといった種類がありますが、乳がんは乳腺に出来るがんのことを言います。
乳がんは腫瘤(しゅりゅう。腫れ物やコブのこと)の大きさとリンパ節に転移しているかどうかで0期から4期の5つのステージ(段階)に分けられます。
乳がんの治療を受ける場合には、どのくらいお金がかかるのでしょうか。
国内の乳がんのデータを集約・分析している日本乳癌学会が運営しているHPにいくつか例が載っています。
②約1ヶ月間の放射線治療・・・40万円~50万円(健康保険の3割負担があれば12万円~15万円)
③1年間の内服による治療・・・16万円~24万円(健康保険の3割負担があれば5万円~8万円)
ただし、これはあくまで純粋に治療にかかるお金です。
いざ入院となれば、他にも初診料、検査料、病理診断料、見舞いに来る家族の交通費、差額ベッド代(個室を希望した時)、病院のパジャマ代等の諸経費がかかります。
薬はジェネリック医薬品を使えば費用を安価にすることは可能です。
また、高額医療費制度(医療機関で支払う金額が一定額を超えた場合に、超えた分の金額を後日払い戻す制度。一般的な収入であれば約8万円)を利用することによって、一時的な立て替えはするものの、実際の金銭的な負担を抑えることができます。
ただし①~③の例はいずれもがんの初期段階でかかった費用のため、もっと進行しているがんの場合は当然ながら入院の日数、投薬の回数も増えます。
「これくらいしかかからないんだ~」と楽観視していてはいけません。万が一の際の出費にも耐えられるように、日頃から預貯金や積み立て等をしておくのが良いでしょう。
乳がん手術を受けておっぱいを失った、あるいは変形してしまった人向けに行われる「乳房再建」という手術があります。
手術でおっぱいを失ってしまうと、女性としての自信を失ったり、家族と一緒にお風呂に入ることが嫌になる女性が多いそうです。完治したからといって、おっぱいを失くした事実を簡単に受け止めることはできないのです。
そんな悩める女性達のために生まれたのが、乳房再建術です。大きく分けて「自家組織法(自分の筋肉や皮膚を移植する方法)」と「インプラント法(豊胸手術で使用される器具を乳房に挿入する方法)」の2つがあります。
一方でインプラント法は使用する器具によって健康保険の対象となるもの、ならないものが分かれています。健康保険の対象とならないものは100万円程かかりますが、健康保険の対象となるものは30万円前後の出費で済みます。
術式は費用だけで考えるのではなく、それぞれの手術方法のメリットとデメリットを理解したうえでどちらの術式で行うのかを決めるのが適切です。
この言葉を聞いたことはあるでしょうか。医療において、患者が主治医以外の医師に治療の意見を聞くことです。
主治医の方針に納得できない場合、他に良い治療方法がないかを患者が知りたい場合等に利用されます。
もしセカンドオピニオンを実行するとなれば、主治医が作成してくれた診断書を持参して、セカンドオピニオン外来を受診することになります。
相談料で2万円~3万円、追加で検査を行えばその検査料が自腹です。
このお金は全てのがん患者に当てはまるものではありません。しかし、納得のいく治療を受けたいと思うのであれば必要経費かもしれません。決して無料にはならないので、安易な受診はできません。
仮に乳がんで入院するとなれば働く女性は仕事を休まねばならず収入が減るでしょうし、専業主婦だって家事・育児をこなす代わりの人材(家政婦さん等)が必要になります。
予定外の収入減と、病院に支払う以外の出費を覚悟しなければなりません。そこで活用したいのが生命保険です。
「女性のための生命保険」と謳った生命保険会社のCMを見たことはないでしょうか。子宮がん、乳がん、子宮筋腫、妊娠中毒症といった女性がかかりやすい&女性特有の病気の保障を手厚くした保険が各社から販売されています。
女性の保障に特化した生命保険である必要はありませんが、医療保険とがん保険は必ず加入しておくことをお勧めします。
特にがん保険は初期の段階から保険金を支払うもの、ある程度がんが進行していないと保険金を支払わないもの、再発しても保険金を支払ってくれるもの等様々です。
がんは医療技術の進歩により亡くなる病気ではなく、治療して治す病気になってきているので、がんと診断されたら●●万円を支払いますという診断給付金を支払う保険が主流のようです。
保険の備えを十分にしておくと、お金の心配をすることなく治療に専念できますから、精神的な負担も軽くなることでしょう。
生命保険は加入する保険会社、加入者の年齢、性別、既往症により保険料が変わりますので、具体的な相場や目安を書くことはできません。
しかし、非喫煙者やゴールド免許証の保有者であれば保険料の割引をする等の特別措置をしてくれる保険会社もあります。
若ければ若いほど保険料は安いのですから、少ない出費で最高の保障を手に入れることができれば安心安泰ですね。
早期発見、早期治療ができれば生存の可能性は上がりますし、治療期間も短期で済ませることができます。
乳がんは初期の段階だと自覚症状がありません。しかしおっぱいを触って自分で触診することでチェックすることができます。このやり方をマスターしておくと、後は実践するだけですから勿論無料です。
おっぱいのしこりをチェックするのは特に有名な方法ですが、自宅のチェックでしこりが見つかったからといって、必ずしも乳がんであるとは限りません。
良性のしこり、即ち乳腺症である場合もあります。母乳育児を経験した方は、見に覚えがあることでしょう。乳腺症とは、母乳がおっぱいの中で詰まってしまって炎症を起こしている状態です。
ホルモンバランスが崩れた結果起こる症状なので、食事と服用で治療できます。
いずれにせよ不安を感じたら外科を(より好ましいのは乳腺外科や乳がんの専門医が常駐している病院)を受診しましょう。
乳がんの検査は、マンモグラフィー検査、乳腺エコー検査、医師による触診等の種類があります。
厚生労働省では広く国民に乳がん検査を受けてもらおうと、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳の方を対象に無料で検査を受けられるクーポンを配布しています。
この取り組みは子宮がんや大腸がんでも同様の制度が運営されており、検査を受けることでがんの早期発見と、がんによる死亡率の減少を狙うものです。
勤務先の健康診断で乳がん検査を受けられる方は、是非申し込みをしましょう。
マンモグラフィー検査はおっぱいを機械で挟むので痛いから嫌だという方は、エコー検査にしましょう。
エコー検査は妊婦さんが受けるエコー検査と同じように、胸にゼリーを塗って行う検査です。検査を受ける人は診察台の上に寝そべっているだけで、痛みもなく楽に終わります。
専業主婦の方は、住んでいる自治体で斡旋している検査があるはずですので、それを利用してはいかがでしょうか。
専業主婦が倒れてしまったら、家事は誰がやるのですか?お子さんの面倒は誰が見るのですか?専業主婦は夫や子供の健康は気遣うのに、自分のことは後回しにしがちです。年に1回でも良いので、自分の体のために行動しましょう。
乳がんの治療でかかるお金は、「がんを治すお金」「おっぱいを元に戻すお金」「その他経費」ということが分かりましたね。
そして最後に1つだけ。乳がんは確かに女性に多い病気ですが、稀に男性も発症します(発症率の割合で言えば女性が99%、男性が1%です)。
自宅でのチェック方法は女性と変わりませんが、女性ほど乳がんに危機感を感じていない人が多いことから、早期発見が難しい傾向にあります。
男性女性問わず、乳がんの知識を持つのは悪いことではありません。必要なのは病気になっても焦らないで済む様に、ここで学んだ必要なお金と心の準備をしておくことです。