年が近くても離れていても、同性でも異性でも「兄弟」という間柄なら必ず起こるのが喧嘩です。友達は集団生活の仲間ですから協調性や思いやりを求められます。両親などの尊属関係は家族の年長者として従わなくてはならない場面もあります。
しかし兄弟は命令や指示に従わなくてはならない関係ではないにも関わらず、年齢による能力差や体力差から対等な関係ではいられない最も難しい関係であるということができます。この関係が喧嘩をヒートアップさせてしまう理由なのです。
喧嘩の表面的な原因究明ではなく深層心理に潜む原因を探し出すことが重要です。
喧嘩する理由でもっとも多いのがモノの取り合いではないでしょうか。もう要らないといって弟や妹にあげたものが懐かしくなって自分のものだと撤回したり、所有率が高くてなかなか自分に回ってこない不平等感だったり、モノを所有ことに関する喧嘩は常に絶えることがありません。
お友達であれば自己主張が激しすぎると嫌われてしまうリスクを想定して譲ったりできますが、兄弟関係は血縁関係なので嫌われても構わないというある種の開き直りがあります。嫌われても構わないと開き直られると喧嘩はますます白熱することになります。
親からしたらモノと取り合いなんて大したことないです。1日か2日我慢すれば所有している本人は飽きることをよく知っているので大人の世界の価値観で喧嘩を眺めるとどうでもいいことに帰結します。
モノの取り合いなどという些細なことで家庭内に嵐が吹き荒れると親は別の理由から怒ることになります。
おもちゃより興味のあるものを出せばすぐに解決することが多いです。たとえばDVDを見せたり、おやつの時間にしたりすることです。他の魅力的なもので惹きつけて物理的には解決しますが、彼らの心には不満が残ったままです。
さっきの喧嘩のことなどすっかり忘れてしまったかのように見えますが、実は彼らの心に黒い影が残ったままになっているのです。モノを取り合う騒々しさ=喧嘩している状態は解消されますが大人はとにかく静かにしてほしいのがゴールなので静かになれば問題解決と思ってしまっているのです。
しかし兄弟喧嘩の根本的な解決には至っていません。
兄弟喧嘩を根本的に解決する方法を見ていきましょう。
モノは1つしかないのだし、兄弟それぞれに買ってあげればいいの?経済的に解決しようとしても新しいモノと古いモノとでまた喧嘩になるのは目に見えます。喧嘩している子どもたちを鎮める方法はそれぞれの言い分を聞いてあげることです。
言い分を聞いてあげる順番でまた喧嘩になりそうなところですが、年上の子どもから聞いてあげると早期に解決することが多いです。なぜならお兄ちゃんだから、お姉ちゃんだからと我慢を強いられている場合が多いからです。
好き好んで年上で生まれたかったわけではないのにあまりにも理不尽な言い分で片付けられていることがあります。地方であるほどこの傾向があり祖父母から発せられるように感じます。年長者を重んじろといったり、年上だから我慢しろと言われたり、矛盾だらけです。
言い分を聞いてあげるようなときには年長者を重んじるを選択すればよいのです。会社などの公の場で新入社員が社長を差し置いて意見を述べることはないはずです。
また年上から言い分を聞いてあげるメリットとして、年下の子の経験値をあげることができます。年下の子は年上の子の言い分を聞くことによって自分の気持ちを相手に伝える手法を学ぶ機会となります。自分の意見を述べるのに不慣れな子にとって重要なインプットとなっているわけです。
兄弟喧嘩が始まってイライラする前にこう思います。「なるほど。今日はそのパターンで来ましたか!」薩長の仲裁に入る坂本龍馬のような大らかな気持ちで臨みましょう。
(坂本龍馬だってあのときはさすがにピリピリしていたでしょうけれど…)
ここでは古くなったおもちゃを年下の子が使っていたのに年上の子が取ろうとしたパターンで説明します。
まず年上の子の横に座って「どうしたの?」と聞きます。肩を抱いたり手を握ったり膝の上に抱っこしてもよいでしょう。怒りのあまり言葉が出てこないようであれば「どうしても使いたくなっちゃったの?」や「返してほしいと思ったの?」など問いかけてみます。
そしてうなずいたり同意してくれたなら「わかるー。お母さんわかるわその気持ち。どうしても使いたくなっちゃうのよね。」「どうしても欲しい気持ちが止まらなくなっちゃうんだよね。」とお金がないときに限ってカードを使ってまで欲しくなった気持ちを思い出しながら物欲を満たしたい気持ちに全力で同意します。
そして年下の子には「絶対渡したくなかったんだよね?」「古いからもう要らないって言ってもんね。お母さんも覚えてるよ」などやはり同意する気持ちで話を聞いてあげます。
喧嘩の原因は自分の気持ちをわかってほしいことが根本的にあるので言い分を聞いて同意して味方になってあげるだけでほぼ解決します。
彼らがきちんと和解するまで最後まで見届けるべきなのでしょうか。どこまで親が介入すればよいのかお教えします。
どちらも味方です。「お母さんは2人の味方だからどうすることもできない」ときっぱり言います。すると年上の子は「ちゃんと貸してって聞けばよかった」や「こっち貸してあげるからそれ貸して」と言えばよかったことなどを冷静に思い出します。
年下の子も貸してもよかったけれどムキになってしまったことに気づきます。そのあとどうするかは2人に任せます。ここから先も親が介入すると自力で解決する方法を考える機会を奪うことになります。
自分で解決することを学んだ子供たちは組織のなかでリーダーシップを発揮できる人間になるでしょう。
「どっちが悪かったの?」と味方と悪者に分ける考え方です。父親がやりがちな手法です。合理的に解決して父親としての威厳を保てれば子どもがどうなろうが関係ありません。さらに「ごめんなさいって言いなさい」と強要させるやり方は心の影をさらに濃くすることになります。
たとえばあなたがパートナーと喧嘩したとします。そして自分の味方だと思っている人物に仲介に入ってもらうとします。自分の味方だと思っている人に「それはあなたが間違ってるわよ。謝りなさい」と言われたらどう思いますか?
客観的には確かにそうなのだけど、わたしの本当の気持ちはパートナーも実家の母も誰にもわかってくれないとなるのではないでしょうか。負けを認めなければならない立場になって考えればそのような判断を下すことはできないと思います。
いかがでしたか?子どもの心に残った黒い影は思春期の頃に表面化します。満たされなかった想いがいろいろな形で噴出されて親の愛情を試されることになります。
育児書には喧嘩の原因や解決方法などはないため大人の権力を行使する手段を用いる人が多いのではないでしょうか。親も子どもも心穏やかに暮らしていくためには工夫することが大切なのです。