子供がいじめられているとわかったとき、動揺しないでいられる親などいませんよね。しかし、対処の仕方によっては、いじめが無事収束したとしても、子供は親への信頼をそこねてしまうかもしれません。
今回は、子供がいじめられたとき、子供の信頼をそこねないために親がとるべき対処法を、子供と話し合うべきいじめの構造とともに考えてみたいと思います。
自分の子供がいじめられているとわかったとき、どうしても、「誰が悪いのか」という悪者探しをしてしまいがちです。なぜ悪者探しをするのか、それは、子供がいじめられているという事実を親が受け止められないからです。
いじめというものは、いじめた方が悪いということが大前提ではあるのですが、一方で、いじめっ子、いじめられっ子がいじめ独特の構図にはまりこんで起こるともいえるのです。
被害者も加害者も、なぜいじめが始まるのかよくわからないままいじめが始まるということがあります。なので、悪者探しを始める前に、まずは子供の話を冷静にきちんと聞くことが大切です。
子供の話を受け止めきらない親が悪者とみなす相手はたいてい、どちらかになるわけです。すなわち、自分の子か、いじめた子か。子供がいじめられていると申し出たとして、親のとるパターンのひとつが「自分の子供が悪い」とみなすことです。
このパターンの親が、子供に投げかける言葉の代表例は以下の通りです。
「お前が悪い」「考え過ぎだ」「そんなことはたいしたことではない」などなど。
実際に、子供の方が悪かったり、考えすぎたりするということもあるかもしれません。しかし、もし子供がいじめられていると訴えてきたなら、親に勇気を出してわざわざ訴えた気持ちを受け止めることが大切です。
でないと、事情をきちんと聞かれることなく、自分が悪いとしてあしらわれた子は、もっと深刻なことが起こったとしても再び親に相談することはしなくなるからです。
とことん話を聞いてもそれでも、自分の子供が悪いとか考え過ぎていると思えるのなら、叱ることはせず、子供が納得するように話してあげましょう。
子供がいじめられていると判明した時点で、すぐにカっとなって学校に乗りこんだり、相手の親に直談判してしまいそうだという人も、まずは冷静になりたいところです。
子供にとって、親に行動力があるということは頼もしい限りですが、いじめにおいて親の行動力はもろ刃の剣ともなりうることを理解しておきましょう。子供は、おおげさにしてほしくないと望んでいるかもしれません。とはいえ、いじめの深刻さによっては、子供の望みを無視してでも親が動くべき時はあります。
子供がいじめられているということが判明したとき、親と子ですり合わせるべき考え方があります。
それは、「学校に行く子が親にとっていい子だというわけではなく、学校に行かないとしても子供が幸せに生きていることが親にとってなによりもすばらしいことなのだ」ということです。そこをふまえてから、子供といっしょにいじめの構図について考えてみましょう。
いじめが発生するのには、いくつか条件があります。
つまり、人の行き来が少なく、外への窓口のない閉鎖的空間に、「みんな同じであること」を複数のメンバーすべてが期待される状態にあるという条件がそろっているとき、「いじめっ子」にストレスがかかることを発端としていじめが始まります。
子供と、異質ということについて検討してみるのもいいでしょう。注意したいのは、他の子供から、異質なところがあるゆえにいじめられると、いじめられた子供はその異質性を呪われたものをみなし排除しようとするかもしれないことです。
しかし、その子にとってはその異質性こそが個性です。子供に、「ちがうからいじめられたとしても、ちがうことが悪いことではない」ということを真摯に伝えましょう。
でないと、いじめられて、異質性がだめだと学び、いじめられないために異質性を封じ込めて学校生活をやりすごすようになった子供は、他の子供に異質性を見出すと、攻撃性を発揮する可能性があるからです。
「自分は必死におさえている異質性をこいつは堂々と発揮している。気に食わない」。
いじめの加害者と被害者は交互に入れ替わるといわれている原因もこのへんにあるのではないでしょうか。
いじめっ子は、「恥」という概念をうまく使いこなしています。いじめっ子は「こいつは、『いじめられている自分』が恥ずかしくて、誰にも相談できないだろう」という子を察知する嗅覚に優れています。
いじめられたから負けというよりも、むしろ、恥ずかしいという気持ちを利用され自尊心を傷つけられていることが、そのゲームにおいては負けであるということです。
子供がいじめられたとき、子供の信頼をそこねないために親がとるべき対処法を、子供と話し合うべきいじめの構造とともに考えてみました。
いじめとは、親子の意志疎通の度合いを試してくるものなのかもしれません。いじめを理由として親に迷惑をかけたくないと死んでいく子供に、迷惑をかけてもいいから生きてほしいという親の気持ちは伝わっていません。
子供がいじめられることは、親としては悲しくて情けない思いで心がはりさけそうになりますが、いじめをきっかけに、子供の親への思い、親の子供への思いを伝え合って、意志疎通をはかり、信頼を深めることとなればと思います。