女性がかかりやすい病気の一つとして、「歯周病」が挙げられます。歯周病には、女性ホルモンが深く関係しているためです。歯周病にかかると、口から腐ったたまねぎのような臭いを発するので、女性としてはなんとしても避けたいところ。またそれだけでなく、歯周病はいろいろな病気も併発する恐ろしい病気なのです。
歯周病は一度かかってしまうと完全に治ることはない、不治の病でもあります。自覚症状もほとんどないので、知らないうちに進行してしまうこともあるのです。ここでは、歯周病の症状や原因について理解し、その予防意識を高めていきましょう。
「歯槽膿漏」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。歯茎が赤く腫れていたり、歯磨きをすると血が出たり・・・というイメージですよね。この「歯槽膿漏」、最近では、他の歯茎の病気とまとめて「歯周病」と言われるようになりました。それくらい、歯周病にはいろいろな症状があるのです。
では、歯周病とはどのようにして発症するのでしょうか。また、どのような症状が現れるのでしょうか。
歯茎と歯茎のあいだには、「歯肉溝」と呼ばれる溝があります。その溝に細菌のかたまりが繁殖し「歯垢」となります。この歯垢を放っておくと「歯石」になり、通常の歯磨きでは取り除けなくなります。そして歯石から炎症が起こり、歯茎が腫れてしまいます。
歯茎の腫れによって、歯肉溝がポケットのように深くなるので「歯肉ポケット」と呼ばれます。このポケットの中に歯垢が溜まり、歯周病を悪化させていくのです。さらに、歯を支えている器官が長期間にわたって細菌に侵されると、歯茎が痛み、歯が抜けてしまうという事態に陥るのです。
歯周病は、風邪やほとんどの病気と同じように、細菌が原因で起こる病気です。しかし、生活習慣が原因となり、歯周病を発症しやすい環境をつくってしまうこともあるのです。具体的に、歯周病の原因となる生活習慣は次のとおりです。
タバコのヤニが歯に付着すると、その上に歯垢が付着するので、歯磨きなどで簡単に取り除けなくなります。また喫煙によって、免疫力をアップさせるはたらきのあるビタミンCを吸収するのを妨げてしまいます。血流も悪くなるので、歯茎が細菌を増殖しやすい環境になってしまいます。
細菌の好物である糖や、歯垢を溜まりやすくするやわらかい食べ物は、控えましょう。よく噛んで食べることで、口腔内を中性に保つための唾液を分泌し、歯茎も強化されるので、なるべく固いものを食べるようにしましょう。また、数回に分けて食べるより、一度に食べる方が、歯周病菌の増殖機会を減らすことができます。
すべての病気予防に共通することですが、大事なことは睡眠を十分にとることです。睡眠をとることによって免疫力が高められます。また、睡眠不足はストレスの元となります。ストレスが溜まると血行が悪くなり、歯周病菌の増殖につながります。そればかりか、ストレスによって、喫煙や甘いものを食べることを増長してしまうこともあります。
歯周病が進行し、歯が抜けてしまってからでは取り返しがつきません。だから、歯周病を防ぐには早期発見がポイントとなります。以下のような症状が出たら、歯周病を疑いましょう。
細菌が繁殖するとメチルメルカプタンという物質を放出するようになり、これが口の中のネバネバや口臭の原因になります。また、歯茎が変形し歯が剥き出しになってくるので、歯が伸びたように見えます。歯茎が炎症で腫れているので、出血もしやすくなるのです。
歯周病は、完全に治すことはできませんが、その進行を抑える治療はできます。初期の段階では「歯周基本治療」、たとえ悪化したとしても「外科治療」によって、歯周病の進行を抑えることができます。
歯周病の初期段階でおこなう治療が、歯周基本治療です。原因となっている歯垢や歯石の除去をおこないます。歯垢は、自身の歯磨きを徹底することで除去することができます。歯科医院で歯磨きの指導を受けることもできます。しかし歯垢をそのままにし、歯石になってしまうと歯科医院で特別な処置を受けなければ除去できなくなります。
また、歯周ポケットが深くなると歯茎が変形し、歯が固定されなくなります。その場合、噛み合わせるたびに健康な歯にも負担をかけています。負担を軽減するために、歯を削ったり、隣の歯と接着剤で固定したりと、噛み合わせの調整をおこなうこともあります。
歯周病が悪化し、歯肉ポケットが深くなり過ぎていたり、ポケット内に細菌が入っていたりする場合には、外科治療をおこないます。外科的な手術によって、歯肉ポケットの深さを減少させることができます。また、歯の土台である歯槽骨の破壊が進行している場合に、部分的に骨を再生させる手術をおこなうこともあります。
歯周病が悪化すると、身体にさまざまな影響を及ぼします。糖尿病や肺炎などの危険性の高い病気を併発する可能性があるのです。これらは、歯周病菌が原因と言われています。また、妊娠中の女性が歯周病にかかると、低体重児が生まれる可能性や、早産になる可能性が高くなるのです。
歯周病が、糖尿病を悪化させてしまうことがあります。歯周病菌から出る物質が、「インスリン」というホルモンの働きを妨げるのです。インスリンは、血液中のブドウ糖を少なくし、血糖値を下げる働きをしています。インスリンの分泌量が少なくなると、血糖値が上がり、糖尿病を悪化させてしまうことになります。
また、糖尿病は唯一歯周病を相互に関わる病気です。糖尿病が、歯周病を悪化させてしまうこともあるのです。糖尿病で高血糖状態が続くと、身体の免疫力が低下し、感染病にかかりやすくなります。歯周病菌を増殖させることになるのです。それに、高血糖によって歯茎の血管も傷んでしまうので、歯周病を悪化させてしまうことになるのです。
細菌の感染が原因で、動脈硬化を悪化させることがあります。その中でも歯周病菌には、動脈硬化を誘導する物質が含まれています。動脈硬化が悪化すると、血管が狭くなったりふさがったりします。特に心筋に血液を送る血管がふさがると、狭心症や心筋梗塞などになり、死に至ることもあるのです。
誤嚥性肺炎とは、風邪をこじらせてかかる一般的な細菌性肺炎と違い、食べ物や唾液が誤って器官に入ってしまい肺が炎症を起こすことによって発症します。歯周病にかかると、口の中に常に歯周病菌がいるわけですから、唾液を介して誤嚥してしまう可能性があるのです。普段は誤嚥の可能性は少ないですが、体調不良などで免疫力が落ちているときには十分気をつけましょう。
歯周病にかかった妊婦は、早産や低体重児を出産する可能性が高くなっています。これは、歯周病菌が血液を介し、子宮の収縮に影響を与えるためです。また、妊娠中はつわりで不規則な食事になったり嘔吐したりすることによって歯周病菌が増殖しやすい環境をつくってしまいます。妊娠前から歯周病の予防と治療を徹底しましょう。
歯周病にかかっても、自覚症状もなく、日常生活にあまり支障がないため、ついつい放っておきがちになってしまいます。でも、合併症も伴う危険な病気なのです。普段から歯磨きを徹底し予防することはもちろん、小さな症状も見逃さないことが早期発見のカギです。特に、女性は、妊娠や更年期でホルモンが乱れるので注意が必要です。また、定期的に歯科検診を受けることもおススメします。