【重い生理痛を改善】中国医学から見たセルフケア

出産が怖い!想像出来ない分娩時の痛みの“乗り越え方”とは?のイメージ画像

生理痛(月経痛)でお悩みの女性は多いと思います。毎月やってくるこの痛みに「生理っていうのはこういうもの」とあきらめて、とりあえず薬で痛みを抑えてやり過ごしているという方もおられるでしょう。

しかし、生理自体は女性の体の機能から起こる生理現象だとしても、生理痛は必ずしも強い痛みを我慢し続けなければならないというものではありません。

ここではまず、生理痛(月経痛)が起こるしくみや原因を中国医学の理論で考え、そこから生理痛をできるだけ改善するためにどのようなセルフケアができるかについてご紹介していこうと思います。

中国医学から見た子宮の働き

「五臓六腑」という言葉を聞いたことはあると思います。人間の内臓をその機能によって肝・心・脾・肺・腎の五臓、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の六腑に分けたのが五臓六腑です。

中国医学で言う「女子胞」つまり子宮は、五臓と六腑どちらにも属さない「奇恒の腑」という分類をされている臓器です。

「奇恒の腑」には他に脳・髄・骨・脈・胆があります。胆だけ六腑とかぶっていますが、その理由はここでは割愛します。

ではまず、中国医学では子宮がどのような作用によって生理機能を発揮していると考えているかを見てみましょう。

1.天癸の作用

「天癸(てんき)」というのは、人間が持って生まれた精気(エネルギー)を元にして女性が成長することにより生まれるもので、女性の成長と性機能の発達を促す働きを持ちます。

女性は天癸の働きによって月経を迎え、妊娠できる体の準備が発達していきます。つまり、女性ホルモン・エストロゲンという物質が発見されていなかった時代に、その働きを天癸という言葉で表したものと考えてもらってもいいでしょう。

2.任脈・衝脉の作用

中国医学では人間の内側と外表は「経絡」という気の通路によって結ばれていると考えます。その経絡の要所要所にあるのが「経穴」所謂「ツボ」です。

経絡には内臓とつながっている「十二正経」と、その十二正経を連絡して補佐する「奇経」というものがあります。その奇経の中の「任脈」と「衝脈」はどちらも子宮をスタート地点としているので、子宮と密接な働きを持ちます。

月経は十二正経からの気血が任脈と衝脉に流れ込んだあと、それが子宮に注がれて起こると考えられています。だから、任脈・衝脈の流れが悪かったり、或いはその大元となる十二正経につながる内臓の働きが悪いと月経にも影響することになります。

3.心・肝・脾の作用

心は血液の流れをコントロールする働き、肝は血液を貯蔵したり足りなくなったら流したりする働き、脾は胃腸を働かせて飲食物から血液を作るもとを吸収するとともに、血液を血管内にとどめる働きを持ちます。

肝の血液を貯蔵する機能や、脾の血液を血管内にとどめる機能が衰えると月経時の出血が増えるなど、正常な月経になるかどうかは心・肝・脾が正常に働いているかどうかも影響します。

以上が、中国医学から見た子宮と月経に関わる要因です。一応ここを踏まえていただいたほうが、以下の説明が理解しやすくなると思われます。

中国医学から見た生理痛(月経痛)のしくみ

中国医学では「痛み」に対する絶対的な原則があります。それは「不通則痛」=気や血の流れが滞ったり止まったりすると痛みが起こるということです。この原則から生理痛は子宮周辺の気血の通りが悪くなったために起こると考えます。

しかし、通りを悪くする原因はいくつかの種類があり、その原因によって対応策も変わってきます。まず、子宮の気血の通りを悪くする原因とその症状を見てみましょう。

1.気滞血お

血液の滞りを表す「お(やまいだれに於)血(おけつ)」という言葉は特に女性にはよく目にするものではないかと思います。その「お血」が発生している状態が「血お」です。気滞というのは文字通り気が滞った状態です。

中国医学では、血液は気がもつ「推動作用」によって全身を流れていると考えます。気の流れが子宮で滞ると血液も流れなくなり、そこで「お血」が発生します。

生理の1~2日前から下腹部が痛くなって、押すとさらに痛みが強くなり、生理が始まると出血の量が少なくて、血の色が紫っぽいという場合「気滞血お」であると考えられます。

2.寒湿凝滞

湿というのは「湿邪」ともいい、体内の水分代謝がうまくいっておらず、余計な水分が残って体に影響しているものです。寒湿凝滞はその湿邪が子宮に滞り、冷えと結びついて「凝りかたまって滞っている」という状態です。

生理の数日前から下腹部の痛みがあり、押すと痛みが強くなるが温めると痛みが改善するもので、出血が少なく血の色が黒っぽいという場合「寒湿凝滞」であると考えられます。

「気滞血お」との違いはお腹に冷えを感じたり、体全体が重だるかったりすることと、出た血液の色が赤みがほとんどないどす黒い状態であるということです。

3.湿熱下注

「寒湿凝滞」とは逆に、湿邪に熱が結びついて子宮に流れ込んでいるという状態です。

生理の数日前から下腹部の痛みがあり、押すと痛みが強くなるという点では同じですが、下腹部、もしくは前身のほてり・熱感があって、出た血の色が濃い赤で、血液やオリモノが粘液状にねばっこいときは「湿熱下注」であると考えられます。

4.気血虚弱

上記のとおり、人間の血液は気の働きによって流れています。しかし、気の働きが弱いと血液を流れさせる働きも弱くなります。もしくは、血液自体が少ないと、血液の中に存在する気の量も少なくなり流れが悪くなります。

生理前にはっきりとした痛みではないけれどなんとなく下腹部がしくしく痛んで、押したりマッサージすると痛みが和らぐもの。血液の量が少なく、色が薄くて状態はサラサラしているものは「気血虚弱」であると考えられます。

付随する症状として、顔の血色が悪く、精神的に元気がでなかったり、体が疲れやすかったりします。

他にも原因となるものは考えられますが、代表的なもの4つを挙げてみました。

自分の症状がどれにあてはまるかはっきり分からない、或いはどこにもあてはまらないという場合は、漢方を専門にしている薬剤師さんや、中国医学を修めている鍼灸師(鍼灸師全てが中国医学を学んでいるわけではありませんので)にご相談の上見極めてもらってください。

日常でできるセルフケア

では以下に、各症状別に日常的にできるケア、生活改善などについてご紹介します。

1.気滞血おの場合

「気滞」というのは、気の量自体が少ない「気虚」とは異なり、体内の気の量は正常だけれど流れが悪くなっているという状態です。そして、この場合の「お血」は気滞が原因なので、気滞を解消してあげれば症状は緩和されます。

具体的な方法としては、気の通り道を作ってあげるためのストレッチをするのがいいでしょう。中国では古代から体のあちこちを伸ばして気の流れをよくする「導引」と呼ばれる体操が養生法として行われて来ました。

ゆっくりお風呂に入って体全体を温めたあとに、勢いを付けずにゆっくりストレッチをしてあげるのがいいでしょう。特に下腹部の滞りをなくすためには股関節や腿裏を伸ばしてあげるのが有効です。

ちょっと早起きしてラジオ体操をしてみるのもいいと思います。日本のラジオ体操は全身の様々な場所を伸ばせる優秀な体操で、広い意味で「導引」に入れることもできます。ただし、あまり勢いをつけてやらないほうがいいでしょう。

そうして体のあちこちを伸ばして気の通り道を作ってあげたら、今度はウォーキングなどの体に大きな負担がかからない運動で全身の血液を循環させてあげると、子宮にある滞りも徐々に流れていきます。

2.寒湿凝滞

この場合は冷えの解消と水分代謝の改善が主な方法となります。

冷えの解消は、まず冷やさないことと温めてあげることです。冷やさないというのは外気温で冷やされないというのと同時に、冷たい飲み物食べ物を摂ることで体の内側から冷えるのを防ぐということ。

飲み物はできるかぎりホットで、食べ物はできるかぎり生のもの、例えばお刺身やサラダなどを避けたほうがいいでしょう。

ぬるめのお風呂に半身浴で20分ほどつかるというのも有効です。少し長めの半身浴は、下腹部を温めてくれるのと同時に、発汗作用をうながして体内に滞っている余計な水分「湿邪」を流してくれます。

3.湿熱下注

この場合は水分代謝の改善と、熱を冷ます体の機能を上げてあげるのが主な方法となります。

熱を冷ますといっても、冷えの改善と逆に冷たい物を摂ればいいかというとそういうわけではありません。内臓を冷やしてしまうと、内臓の機能が落ちて体全体の働きが悪くなるので、たまった熱を外に出したり、冷ましてあげる働きも落ちてしまいます。

ゆえに飲食物については「寒湿凝滞」と同様冷たい物を避けるのが基本です。そして、利尿作用があるお茶やコーヒー(もちろんホットで)を飲むことで水分の排出作用が高まれば、尿とともに熱も出ていきます。

また、体を冷やすのは血液以外の体液である「津液(しんえき)」の役割なので、消化吸収がよいものを食べるとともに、食事の量を節制して胃腸をいたわり、飲食物から津液の元となる水分を吸収しやすくしてあげます。

たまった水分を出さねばならないのに、水分を吸収しなくてはいけないというのは矛盾しているように見えるかもしれませんが、湿邪というのは体を循環せずに滞っている水分なのでそれは外に流してあげねばならず、しかし、湿邪によって循環が悪かったため必要なところに足りていなかった水分はきちんと摂取して循環させてあげなければならないので、湿邪の排泄と新しい水分の摂取は矛盾していません。

ウォーキングでしっかり汗を流し、熱と余計な水分を外に出してあげるというのもいいと思います。

4.気血虚弱

この場合、一番重要なのは体内の気と血を増やしてあげるということです。気と血の原料は、大気から吸収する空気と、飲食物に含まれる「精微」つまり現代の言葉にすれば栄養です。

そのためには胃腸の働きをよくしてあげる必要があります。冷たい物を摂らないのはもちろんのこと、胃腸に負担をかける刺激物や消化に悪い食べ物、例えば玄米などを食べるのも避け、消化によいものを多めに、そして腸の働きを助ける野菜類を多めに食べます。

野菜類を多めにといっても、動物性のものを断つのは体に決していいことではありませんので、量は少なめでも鶏肉や魚など良質の動物性蛋白質も摂るようにしましょう。

気血虚弱の人はまず体自体が弱いので運動する気力もわかないと思います。だからまず、室内でできる軽度の体操やストレッチなどから始めて、多少運動する気力が出てきてから、短時間のウォーキングあたりから体を動かすことに慣れていきます。

以上それぞれの症状に合わせたケアをご紹介しましたが、このようなケアは短時間で効果が出るものではありません。数カ月から、場合によっては年単位で継続するつもりで行ってください。

注意点

セルフケアでは改善できるレベルに限界があります。できれば漢方専門の薬剤師さんや鍼灸師にご相談の上、漢方薬・鍼灸治療と併せて行ってください。

強度の生理痛は、子宮に関わる病気によって引き起こされていることがあります。あまりに強い生理痛があった場合はまず医師に相談して検査を受けることをおすすめします。

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る