20代を半ばを迎えると、気になるのが化粧品の選び方です。化粧品を選ぶときに、何を目安にしていますか?「無添加」や「自然派コスメ」などの表示があるものが、肌にいいとは限りません。また「毛穴ゼロ」や「うるおい長持ち」などの、やや大げさなうたい文句につられてしまうのもよくありません。今回は、化粧品を正しく見分ける方法についてご紹介します。
化粧品の成分の中で、トラブルを引き起こしやすいものは何でしょう。「防腐剤」、「香料」、「着色料」などのいわゆる添加物がいつもトラブルの原因として挙げられます。しかし、化粧品による一般的な肌荒れの原因として頻度が高いものを挙げると、以下のようになりました。
1.クレンジング
オイルタイプやリキッドタイプなどの威力が強いものを使い、それらで長い間(およそ1分以上)こすり続けることが肌への負担になります。
2.日焼け止め、化粧下地、リキッドファンデーション
これらは肌に吸いついて、肌をカバーする性質の化粧品です。そのため肌を乾燥させたり、使用中に毛穴を詰まらせてニキビの原因を作ってしまいます。毎日使っていると特に負担になります。
3.油分が多いオイルやクリーム
まだまだ皮脂分泌がある45歳以下の人が、油分が多い化粧品を使いすぎて毛穴を詰まらせたり、ニキビができてしまうケースがあります。
4.シミやシワの対策用化粧品
いわゆるアンチエイジング化粧品というのは、刺激が強めに作られています。特に高価なシートマスクなどでかぶれるケースが少なくありません。
5.拭き取り用化粧品
拭き取りタイプのクレンジングや化粧水などは、毎日使うと摩擦によって肌荒れを引き起こしやすくなりやます。
近年は化粧品の技術もずいぶんと進化を遂げて、様々な質感のものが発売されています。界面活性剤やポリマーなどで作ったゲルやクリームでも、付け心地がサラサラになったりあるいはフワフワになったりするのです。しかし、これらが肌のバリアを壊してしまうケースがあります。
化粧品は水性のものや油性のもの、様々なものを混ぜ合わせて作られています。成分の違うものを混ぜた上で、サラサラやフワフワなどの女性好みの質感を作り出して、それを安定的に保つのは至難の業です。そこに登場するのが界面活性剤なのです。
化粧品は混ぜるものなので、それを肌に塗ると肌のうるおい成分なども一緒に混ざってしまいます。そのまま洗顔をすると、肌のうるおいも溶けて流れていってしまいます。これが界面活性剤による肌バリアの破壊なのです。
近年の化粧品技術の進歩に伴い、界面活性剤による肌バリアの破壊も進んでいるといわれています。軽いものも含めると、5割近くの女性がこうした原因から肌荒れを引き起こし、それに気づいていないというのです。
では、界面活性剤を含まない化粧品がいいかというと、それも極論です。それは、化粧品を使って通常のスキンケアを行うことをほとんどあきらめるも同然なのです。
代わりに昔ながらの水おしろい(芸者さんが使うようなもの)でお化粧をして、石けんで洗って、ワセリンかオリーブ油を塗るといった塩梅になります。まさしく江戸時代さながらの手法で、美白やシミ・シワ対策のケアなどはもちろんできません。
つまり、界面活性剤が悪いといっても程度の問題なのです。適度に科学の恩恵にあずかりながら、美しさをキープするのが賢い方法なのです。それでは、界面活性剤を使いすぎずに上手く付き合っていくためには、どうしたらいいでしょうか。
「水と油」といえば、「犬猿の仲」という意味です。絶対に手を結ばないことや、仲が悪い状態を表します。そうした「水性のもの」と「油性のもの」を見事に混ぜてしまう界面活性剤の威力は、まさしく強力です。こうして聞くとおっかないですが、上手な使い方をすれば便利なものなのです。
水に油を混ぜるのと、油に水を混ぜるのとでは、どちらが難しいでしょうか。「結局混ぜるのだからどちらも同じでは?」と思う人は、お料理を想像してみて下さい。
ケーキを作るときには、通常まずはバターをかくはんして、そこに卵や牛乳などを少しずつ入れていきます。先に卵や牛乳などの水系のものを用意して、そこにバターを入れて溶かすのは難しいということです。
従って、水に油を混ぜるのと、油に水を混ぜるのは同じことではないのです。つまり、大量の水に少量の油を混ぜるのは難しいということです。
近頃の化粧品市場では、べたつくものがとにかく嫌われています。つまり油よりも水の多いものが好かれているのです。これが危ないことであることにお気づきになるでしょうか。
大量の水に少量の油を混ぜて、界面活性剤で乳化させるわけですが、このようなものは混じりにくく分離しやすいため、界面活性剤がたくさん必要になります。「サラッとした乳液」や「透明感のあるフワフワのゲル」などが、これらに当てはまります。
界面活性剤が入っていない化粧品も存在します。しかし界面活性剤には分類されないものの、実際には界面活性作用を持つ成分が含まれているものもあります。界面活性剤を含まない化粧品は、オイルやワセリンなどの「油のみ」や、化粧水のように「水のみ」のものです。
しかし、このどちらかだけでは上手なスキンケアはできません。要は使いすぎに気をつけながら、界面活性剤と上手く付き合っていけばいいのです。
忘れないでほしいことは、化粧品は農産物ではないということです。化粧品は本来工業製品であるため、工業製品に「自然派」を求めるのはいささか無理があります。
化粧品の安全性が求められるようになったのは、食への安全が叫ばれるようになったこととの関連があるのでしょう。農薬や添加物などの問題が発生してから、自然派やオーガニックコスメがいっそう強く求められるようになりました。また、動物性のものよりも植物性のものの人気が高まりました。
食べ物を口から吸収するのと同じように、肌が化粧品を吸収するわけではありません。つまり、食への安全が化粧品の安全にそのまま当てはまるわけではないのです。食品添加物なども、気にしすぎると疲れてしまい食事が楽しくなくなります。
ちなみに、卵黄に含まれる「レシチン」は界面活性作用があります。自然界にもそのようなものが存在するため、界面活性剤の全てが悪いわけではないのです。また、肌表面に存在する「リン脂質」は天然の界面活性剤の働きを持っており、肌表面で水分と油分を乳化させています。
「毛穴ゼロ」をうたった化粧品なのに毛穴が中々減らなくても、「シワが取れて若返る」をうたった化粧品なのに効果がわかりづらくても、長年使っていて肌荒れを引き起こさないのであれば、「自分の肌に合っているからいい」という度量で使いましょう。