胎児と母体に影響大!やせた妊婦さんも妊娠糖尿病に気をつけて

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妊娠期間は、不安もありながら生まれてくる可愛いこどもとの未来を想像して幸せな気分に満たされた最高の時間ですね。

つわりや体重の増加、安定しない体調などいろいろ妊婦さん特有の身体の不調はありますが、定期検診で異常がなければ一安心という10か月を過ごし出産を迎えることでしょう。

これから生まれてくる赤ちゃんと健やかに10か月のマタニティライフを楽しもう!と前向きな妊娠期間を過ごすために最近の日本で急増している妊婦さんのトラブルについてお知らせします。

初耳の女性も多いであろう「妊娠糖尿病」という病気ですが、妊婦さん誰にでも発症する可能性があります。糖尿病と聞くと怖いイメージがありますが、必要以上に不安にならず快適に健康をコントロールする知識を身につけてくださいね。

なぜ急増する?「妊娠糖尿病」

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まず妊娠糖尿病とは何でしょうか?妊娠糖尿病とは、妊娠前には糖尿病ではなかった人が妊娠中のホルモンの影響をうけて糖代謝がうまくコントロールできなくなる糖尿病です。

通常は出産後に回復する一過性の糖尿病であり、正確には糖尿病に至っていない妊娠中の糖代謝異常ですので一般的には胎盤の排出とともに血糖値異常も回復という経過をたどる症状です。

しかし、妊娠糖尿病にかかった妊婦はのちに糖尿病へ移行する確率がかなり上昇すると言われているので血糖値の管理には産後も要注意なのです。

妊娠糖尿病は妊娠中に糖代謝異常を発症することが前提であり、妊娠前から糖尿病であった女性、また妊娠中に「糖尿病」の診断を受けた人は妊娠糖尿病の対象に含まれません。妊娠糖尿病の診断基準は通常の糖尿病の基準とは異なります。

現在では妊婦さんの10人に1人以上の割合で妊娠糖尿病にかかっているとされており、実は家系的に糖尿病とは無縁の女性や食生活にも普段から気を配っている女性にも発症リスクがあります。

世間では「糖尿病」と聞くとぜいたく病や肥満の人特有の病気と認識されていますが、妊娠糖尿病に関してはやせていても甘いものが苦手でも妊婦さんなら誰でもなり得る病気です。

では最近なぜ妊娠糖尿病の女性が急増しているのでしょうか?ひとつには2010年に妊娠糖尿病の診断基準が改められ、それまで検査でひっかからなかった基準の糖代謝異常の値が妊娠糖尿病と診断されるようになったためです。

厳密な診断基準に改まったことによりそれ以前と比較して妊娠糖尿病の妊婦数は2倍以上と急増しました。

しかし、それだけではなくふたつめの理由として最近の女性は高脂肪、高糖質で塩分の多い食生活習慣や運動不足などの現代の生活パターンで潜在的に糖代謝異常を持っている可能性が高いことがあげられます。

さらに年齢とともに体内でのインスリン分泌は低下していくため、出産の高年齢化に伴い増え続ける35歳以上の妊婦さんに糖代謝異常が多くみられるという理由があげられるでしょう。

妊娠糖尿病になる原因

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妊娠糖尿病にかかる原因は妊娠中の「ホルモンの変化」です。血糖値をコントロールする役割を持っているのが膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンですが、妊娠すると胎盤から出るインスリン抵抗ホルモンがインスリンの効き目を低下させてしまいます。

その結果、血糖値を下げる役目をしているインスリンがうまく体内で働かなくなり、高血糖状態が続くという糖代謝異常となってしまうのです。

通常は妊娠中の身体は膵臓からインスリンをほぼ3倍増やして体内の血糖値が上がりすぎないようにコントロールするという働きをします。

しかしこのインスリン分泌量が増えない妊婦さんは高血糖状態が続くことになります。これが妊娠糖尿病の原因です。食べ過ぎなどの生活習慣や肥満であることなどは直接の原因ではありません。

どんな人がなりやすい?

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どんな人にも発症する可能性はあります。以下の条件の妊婦さんは妊娠糖尿病になりやすいとされています。

  • 妊娠前から肥満の人
  • 家族(特に直系)に糖尿病の人がいる
  • 35歳以上の妊娠である
  • 巨大児(出生体重4000g以上)の出産経験がある
  • 妊娠高血圧症候群を患っている、または過去に患っていた

この他にも妊娠して過度に体重が増えている妊婦さんも要注意です。ただし妊娠糖尿病にはあきらかな自覚症状がないため、自分では気づくことはなく検診で初めて妊娠糖尿病と診断されるのが通常です。

妊娠糖尿病になりやすい女性に肥満の人という条件が含まれていますが、通常の糖尿病でもやせている糖尿病患者もいます。妊娠中に体内の血糖コントロールが追い付かないやせた妊婦さんにも可能性はあります。

もともとやせていた、妊娠してからも太ったり体重がそれほど増えてないので安心というわけではありません。やせた妊婦さんにも要注意な病気であるところが妊娠糖尿病の怖いところです。

やせていても妊娠している以上は油断ができないので、検診はかならず受け、自らも検査結果の値に気をつけるようにしましょう。

妊娠糖尿病は何が怖い?

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通常の生活ではほぼ自覚症状はないため、主に検診で血液検査や尿検査の尿糖の異常から確定するためにさらに75gブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けて妊娠糖尿病を発見・診断されます。

妊娠がわかると妊娠初期の検診で血液検査が行われ、その際に血糖値の異常があればその時点から血糖コントロールなどの治療をおこないます。

しかし遺伝的に糖尿病の家系などのリスクファクターがある女性は妊娠前であっても妊娠を望んだ段階から自発的に血液検査による血糖値の検査を受けるようにして血糖値異常にはくれぐれも注意が必要です。

血糖値の異常により、胎児や出産、母体へのリスクが高まります。とくに胎児の身体を形成する初期から血糖値をコントロールすることは先天異常、奇形や流産などの障害を避けるために不可欠です。

妊娠前に血液検査を受けておくのが理想的ですし、最近ではスクリーニング検査と判定を厳しくおこなっていない産院もあるようなので、検診で尿糖が出ていなくても自分に妊娠糖尿病の疑いがないかよく医師に尋ねてみても良いでしょう。

糖尿病である場合の母体と胎児へのリスクについては以下のようなものがあります。

考えられる胎児への影響

  • 先天異常の可能性の増加
  • 流産、早産、死産
  • 巨大児または発育不全
  • 胎児の奇形、呼吸不全、血糖異常

考えられる母体への影響

  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水過多症による早産・死産
  • 妊娠中毒症による胎盤早期剥離
  • 難産、帝王切開
  • 将来的に2型糖尿病を発症するリスク上昇

恐ろしい項目ばかりですが、あくまでもリスクがあるということであり良好な血糖コントロールでリスク回避が可能なことですので必要以上に不安に感じたりしないでください。不安というストレスも血糖値異常を引き起こします。

妊娠糖尿病と診断されたらかかりつけの担当医師との細やかなコミュニケーションをとり、妊娠中の体調管理や生活での注意点についてじっくり指導を受けられるようにしましょう。

妊娠糖尿病を予防する

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これで妊娠糖尿病についてたいていの必要な知識は得られたことと思います。それでは肝心な妊娠中に血糖値異常にならないための予防法にはどんなものがあるのかについて考えます。

「甘いものなんてほとんど食べない」「塩分や脂肪分だって人より多く摂ってないのに」という妊婦さんがある日突然妊娠糖尿病の診断を下されるように、妊娠糖尿病は生活習慣病ではありません。

結論から言うと妊娠糖尿病に関しては妊娠中のホルモンの影響によるものなので、通常の糖尿病のように食べ過ぎや塩分過剰摂取などでなるものではないため、決定的な予防法はありません

しかし、通常の糖尿病と同様に食生活や生活習慣に血糖値コントロールを加える工夫をすることで予防し、悪化を防ぎ改善を促す効果はあります。血糖値の乱れを抑制して妊娠中に血糖異常の予防法となる生活アイデアをご紹介します。

食生活に気を配る

まずはカロリーの過剰摂取に気をつけてください。妊娠中のダイエットは胎児のためにも禁物ですが、それと同時にくれぐれも食べ過ぎには要注意です。

味付けが濃いものは食べ過ぎの原因になりますので薄味の調理を心がけて、味を付け加える塩、しょうゆや高カロリーのマヨネーズやドレッシングなどの調味料は控えめにします。

大皿に食事を盛り付けて皆で楽しく食べるのはとても良い食事の時間です。しかし、妊娠糖尿病の予防には食べ過ぎないことが重要です。腹7分目くらいの量をじっくり時間をかけてかけて満腹感を得ると良いでしょう。寝る3時間前からは飲食をしないのが理想的です。

妊娠期間だけでも良いので、自分の食べてよい分量がわかるような小皿に盛り付けて食事量を管理しましょう。お茶碗を小さ目なものに変えるのも一案です。

ご飯・パン・麺類などの炭水化物は糖として吸収され、また赤身の肉などの動物性たんぱく質はもともと糖尿病のリスクを上昇させるものなので、炭水化物と動物性たんぱく(肉など)は控えめにしましょう。

野菜にはたくさんの食物繊維が含まれているので、排便を促す効果があり便秘や肥満の防止になります。食物繊維は腸内で糖分と脂肪分を吸収し血糖の上昇を抑える働きをするので糖尿病予防には最適です。

淡色野菜と緑黄色野菜をバランスよく1日350g以上摂取して、妊娠中の肥満を防ぎましょう。肥満と血糖値異常は概して関連性が高いものです。

おやつもストレス解消に必要!という妊婦さんは量と内容に気をつければおやつを我慢する必要はありません。あまりに高脂肪なものや糖分が多いものは極力少な目にしてください。

その他のおせんべいやクッキーなどのおやつを食べる時も、ついついたくさんつまんでしまうような袋から直接食べることや、テレビや雑誌を見ながら食べる「ながら食べ」はやめて、食べる分量だけ取り分けてゆっくり味わって食べ満足感を得ましょう。

また、量をたくさん食べては血糖値が急激に上昇して下降、また食べて急上昇というジェットコースターのような血糖値状態は気づかないうちに身体に大変な悪影響を与えています。

そのため食後の急激な血糖値の上昇を避けるために1日に食べる量を6回に分けてたべる分割食という方法も有効です。

「GI値」という言葉を知っていますか?GI値とは簡単に言うと食べ物に対する血糖値の上昇度合いのことで、血糖値をコントロールするための食事をめざす人にはもっとも重要な指標となります。

例えば、白米より玄米のほうがGI値が低く、薄力粉より全粒粉のほうがGI値が低いので、ご飯やパスタ、パンなども玄米や全粒粉パスタ、全粒粉パンの方が血糖値がゆるやかに上昇し、急激には上がりにくくなります。

炭水化物が大好きで炭水化物メニューをやめるのがストレスな妊婦さんは、ご飯を玄米に変える、パスタ・パンなども全粒粉入りのものに変更するなどの工夫で血糖値をコントロールしてはいかがでしょうか?

これを機会に食品のカロリーやGI値をチェックして、健康的な食事メニューを考えると、産後のダイエットにも役立ちますのでぜひ調べてみてください。意外な食品が高カロリー、高GI値であるのを発見するのも楽しいものです。

GI値の低い食品の組み合わせの献立の食事で心臓病や糖尿病のリスクが下がり、食物繊維をとることで肥満を防ぐことができるので、これらの食品を意識して毎日のメニューに取り入れてくださいね。

また妊娠糖尿病を診断された妊婦さんは将来に通常の糖尿病を発症するリスクが高くなっていますので、産後も長く続けられる血糖コントロールを目指した健康的な食生活をこの機会に習慣にしておくと良いでしょう。

運動で糖尿病を防ぐ

食事をかなり気をつければ血糖値のコントロールができると思って安心してのんびりしがちですが、運動も妊娠糖尿病予防には不可欠です。

運動をしないと体重は変わらずとも筋肉量が減って基礎代謝率が下がり、全体的には脂肪の多い身体になってしまいます。見かけは痩せているこの「かくれ肥満」の人にももちろん血糖異常の発症リスクがあります。

とはいえ妊娠中にあまり激しい運動はおすすめできませんし、息が上がるような激しい運動をする必要は全くないどころか、無理は妊娠中の身体には負担になりますので、簡単にできる運動習慣を毎日30分程度欠かさずに取り入れると良いでしょう。

毎日の生活で妊婦さんが負担なくできるおすすめの軽い運動習慣のアイデアは以下のようなものがあります。

  • お気に入りの場所までの散歩または通勤での徒歩(ウォーキング)を日課にする
  • エレベーターなどを使わずなるべく階段を使って移動する
  • 掃除・洗濯・買い物などの家事にも身体を積極的に動かす
  • テレビを観ながらでも寝る前でも好きな時にストレッチ運動をする
  • マタニティ・ヨガやマタニティ・スイミングなどを楽しむ(医師の許可を得る)
  • 赤ちゃんと通う施設・公園・保健所などまで歩いて次々と見学しにいく
  • 座っている時間も腕回しや足指の運動をするなど小さい動きを生活に取り入れる

その他にも妊娠の経過によってできる動きが変わってきますので産科の医師と相談のうえ、してもよい運動を無理のないように選んでおこなってください。

安心して出産を

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妊娠糖尿病が与える母体や胎児へのリスクなど心配になるようなこともお伝えしましたが、この病気を怖がり過ぎることなく、血糖値異常を予防できる生活習慣をぜひ心がけてみてください。

万一、妊娠糖尿病と診断された場合は必要な治療を受けることができます。しかし、妊娠中に経口の糖尿病治療薬を投薬することはできないため、基本は食事療法と運動習慣などの生活指導が主軸の治療方法となります。

前章でお伝えした「妊娠糖尿病の予防法」がすなわち「妊娠糖尿病の治療法」となると考えてください。また、食事と運動によりどうしても血糖コントロールが改善されない場合はインスリン治療という方法がとられることもあります。

しかしながら妊娠糖尿病は予防も治療も毎日の食生活への工夫と、毎日欠かさない運動習慣が一番大切なカギとなりますので、ぜひこの2点については日々留意して妊娠期間を快適に過ごしてくださいね。

産後については、授乳により母体は2型糖尿病への進行が予防され、こどもも肥満や糖尿病の発症率が低いという研究報告がありますので、授乳育児も積極的に頑張ってください。

妊娠糖尿病については糖尿病と診断基準も管理方法も異なるため、わからないことや気をつけるべき点などはご近所の内科ではなく積極的に産科の担当医に聞き、納得して安心を得てください。

なによりも妊娠糖尿病を必要以上に恐れたりする余計な心配は無駄なストレスとなりますので日々安心してマタニティライフを楽しんでくださいね。

現代の先進的な医療技術と、自分の身体が持つ力、赤ちゃんの力を信じて素晴らしい出産の日を迎えられるよう祈っています。

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