漠然とした不安。もしかしたら人生においてこれが一番おそろしいものなのかもしれません。対象がはっきりしている恐怖ならば、輪郭もはっきりしているので、恐怖の範囲も決まっています。対象を知っているので対策も打てます。
しかし、何が怖いのかわからないのが不安の怖いところなわけですよね。特に、眠りにつくまえに不安にかられると夜じゅうくよくよすることになり、眠ることができなったりするわけです。
今回は、不安になったときに是非試したい具体的な解消法を提案します。よりによって寝る前に不安になるという悩みが解消できることとなれば幸いです。
一旦恐怖にかられると、恐怖の感情がもっと大きな恐怖をつれてきます。そういえばあれもコワイ。これもコワイ。いわゆる疑心暗鬼というやつです。
お酒を飲んで気分よく酔っ払っているときには、気にならないようなことがなぜ寝る前に限って気になるのでしょう。お酒を飲んでいる自分も、寝る前の自分も同じ自分なのに。
脳はいったんなにかしらの感情のスイッチが入ると、それと似たような感情を呼び起こすための情報を探すようになります。楽しい気分のときにはなにを見ても楽しく、怒っているときは何を見ても腹立つなんてことありませんか。
不安も同じで、いったん不安になると、不安をもっと呼び起こすような情報を脳が探し始めるのです。連鎖を断ち切りましょう。以下、連鎖を断ち切るための解消法を提案します。
不安になったら、原因を探ることもひとつの不安解消法です。しかし、原因を探ると言っても、翌日仕事で睡眠時間は確保したい夜、不安の原因を探って睡眠時間を削って翌日に支障が出ても困りますよね。
かといって、不安にかられたままでも、気がかりなことに頭をとられてそれはそれで眠れないわけで。なので、夜、不安な気持ちを感じたのなら、ともかく何を不安に感じているのか、紙に書き出してしまいましょう。
書いてしまったら、解決するのは明日の自分にまかせて、今やるべきことに頭を切り替えましょう。夜中にくよくよ考えても、悪い方向に行ってしまう経験はあるのではないでしょうか。
一晩眠ったら、朝起きると、意外と不安に思っていたこともたいしたことないようなことだったりするものです。
温泉に入ってリラックスしているときや、運動に打ち込んでいるとき、はたまた酔っ払って気持ちよくなっているときに、不安になることはありますか。体がほぐれていると不安な気分はやってこないのです。不安は気分です。気分は身体から働きかけられるものです。
寝る前に不安になったら、ヨガがおすすめです。家でも手軽にできるような初心者向けのDVDをゲットしておくといいですね。寝る前にヨガなんてやったら眠れなくなるではないかと思うかもしれません。
大丈夫です。不安にかられたって眠れませんので同じです。しかしヨガの場合は同じどころか、身体がほぐれてきますし、体がほぐれていることが眠りに入るには大切なのです。
不安にかられて身体を硬直させてもんもんとしているよりは、ヨガをやっている方がはるかに建設的です。難しいポーズに必死で挑戦していると、頭がそちらの方に向かって不安なことも忘れてしまいますよ。
いちいちベッドから起き上がって、体全体を動かすなんてめんどくさいと思うのなら顔筋ストレッチをおすすめします。こちらも本でもDVDでもよいので、初心者向けの手軽にできるものをゲットしましょう。
顔だけがほぐれるだけで、体全体もほぐれます。それから、意外なメリットもあります。自分の顔を鏡に映してストレッチをするわけですが、美のために必死になって変な顔をしている自分をみると、ばかばかしくなって不安に思うこともどこかに飛んでいきますよ。
つまりは、自分のことを客観視するということが不安解消のヒントだということなのです。
ヨガにせよ顔筋ストレッチにいせよ、不安な気分に対して身体から働きかけるのはかなり有効です。なぜなら、不安自体になにか意味があるわけではないからです。ただ単に「不安な気分」が問題なのです。
試しに不安に思っていることを紙に書き出してから、ヨガや顔筋ストレッチをして、気分を変え、あらためて紙に書いてあることを見て下さい。「それはそれで、まあいいや」と思っている自分を発見することでしょう。
不安な気分のときに不安なことをイメージするから不安になるだけで、不安でない気分のときに、不安なことを書きだしてあることを見たとて「まいっか」になりうるのです。
さらに、体へ働きかける有効性として、心のベクトルを今(体)に向けるという点があります。不安、特に予期不安と呼ばれるものは、心が未来に向かっています。不安は未来に向かっているのです。それも、絶対起こるかどうかすらわからないようなことに恐怖を抱いているのです。
自分自身は「今」にしか存在できないのに、不安をスイッチにして未来に飛ばそうとしています。体に働きかけると、未来に飛んで行った心を今(体)に戻してあげることができるのです。
EMDRとは、PTSD患者などに使用される治療法で「眼球運動による脱感作および再処理法」を指します。このEMDR、本来は医師の指導のもとに特定の機具を使って行われるものですが、簡単にできる方法もあるのでご紹介します。
準備するものはありません。両手を使うだけです。
これだけです。メトロノームのようにカウントする音があってもいいでしょう。1秒ごとにカチカチとリズミカルに両目を右左右左と動かす。
不安になったら、1分ほど動作に集中することで、不安な気分を変えるという治療法です。
これも実際的な効果のほかに、先のストレッチと同様「私、一体なにしているんだろう」というばかばかしさも効果を出しているかと思います。
感情は人間が生き残るために役立ってきたものです。ほかならぬ不安もおなじです。命の危機を予測する機能を持つ不安という感情があるから、それを回避する行動をします。
そうやって人間は生き延びてきたわけですが、それは人間が洞窟で暮らして、寝ている間に夜行性の動物に襲われるような太古の時代に役立った感情ともいえます。一方、現代は家で寝ているからと言って、危険な動物襲われて死ぬようなことはないですよね。
不安はあってもいいのです。ただ今っぽくない。それだけです。ですので、人間をサバイブさせてくれた不安という感情に感謝しつつ、「不安さんにはかなりお世話になったけど、現代とはマッチしていないんだよね。やれやれ」などと気軽に接することができるようになるといいですよね。