道を歩いている時にすれ違う人を観察していると腕を前後ではなく左右(実際には斜め)に振るようにして歩いている人がいます。たまに男性にもいますが、圧倒的に女性に多い歩き方です。見た感じゴリラが歩いているようなので私はこれを「ゴリラ歩き」と呼んでいます。
いくらスタイルがよくても、素敵な装いをしていても「ゴリラ歩き」をしていては台無しです。それに、「ゴリラ歩き」を続けていると将来的に体に様々な負担をかけてしまうことも考えられます。そこで今回は「ゴリラ歩き」にならないためにはどうすればいいか考えてみます。
・猫背で歩いている
歩くときに腕を斜め左右に「振れる」のは猫背になっているからです。背筋が伸びた状態で歩いた場合、腕を斜めに振ると体にぶつかるのでそもそも斜めに振ることはできません。猫背になって、肩の関節が体の前にずれているからこそ斜めに振れるのです。
・斜めに歩いている
人間が歩くときに腕を振るのは体のバランスをとるためです。腕を斜めに振ってしまうのは、足の運びが前ではなく斜めに行っているために体の軸が左右に振れることになり、そのバランスをとるために腕も斜めに振ることになってしまうのです。
・首から背中へのこり
猫背になってしまうのは、背筋を伸ばすための背中の筋肉が衰えているからです。猫背で生活している人は、歩かなくても首から背中へかけての負担が大きいのでそもそも凝りやすいのですが、そこにさらに腕を斜めに振って歩くことでより大きな負担がかかります。
・腰痛
猫背になっているということは、上半身の重さが前にむかってかかっているということです。前にばたっと倒れないように支えているのは腰です。さらに、腕を斜めに振ることで腰にはねじれた力がかかって大きな負担となり、腰痛を起こしやすくなります。
・膝痛
膝の関節は前後に支えるのは強いのですが、左右からかかる力には弱い構造になっています。斜めに歩くということは、斜め横にずれた力が常に膝の関節にかかるということなので、膝の周りを支えるじん帯に不安定な負担がかかってしまいます。
1.頭の位置を体の上に置く
人間の頭はおよそ4kg~5kgあると言われています。それが体を支える軸より前に行くと特に直接頭を支えている首や肩には大変な負担となります。頭を体の軸の上に置くにはよく「あごを引く」と言いますが、これだとあごだけ引いておでこを下に下げてしまう人がいます。
2.胸を張って歩く
鎖骨の下に沿って肩の関節に向かって指を滑らせていき、肩の関節の骨に指がぶつかって止まるようなら肩の関節は前に出過ぎています。そういうときは、肩の関節だけ無理に後ろに動かすのではなく、左右の肩甲骨を背骨に引き寄せるようにすると、肩の関節は自然に後ろに行きます。
3.足を前に運ぶ
足の運びを斜めではなくまっすぐ前にします。これは、モデルウォークのように一直線上を歩くということではありません。左右の爪先からまっすぐ伸びた2本のライン上に、左右それぞれの足を乗せていくというイメージです。
4.無理に腕を振らない
姿勢を正しくした歩き方は体に無理な負担をかけません。その結果、変な筋肉の緊張が緩和されて血流もよくなります。また、見た目的にもきれいに見えるはずです。
・足の着地の仕方
歩く時はかかとから着地し、足全体で地面を踏んでから爪先で蹴るのがいいと言われますが、それをあまり意識しすぎてかかとを「ガン」と強く下ろすとかかとの骨や足首を傷めます。逆に、ペンギンのように足の裏全体をぺたぺたとつけて歩くのもよくありません。
かかとの先端ではなく、土踏まずの後ろの肉球(?)の部分で着地し、足の裏全体で地面をぎゅっとつかむようにして後ろの足を前に運んであげるのが理想的です。
・足は膝を前に出して
たまに若い女の子が足を前に運ぶのではなく、膝を折るようにしてぺたぺた歩いているのを見かけます。こういう歩き方は省エネのようでいて膝に大きな負担をかけています。歩く時は太ももから膝を前に出し、膝から下が自然についていくように歩きます。
・腕を勢いよく振っても速く歩けない
よく急いでいるふうにして腕をぶんぶんと大きく振って、しかもそれほど速く歩けていない人がいます。歩く速度を決めるのはあくまで足を動かす速度と幅です。足を運ぶ力が弱いのに腕を勢いよく振りまわしても周りの人の迷惑になるだけで速くは歩けません。
速く歩けないのなら、まず正しい姿勢で歩くようにしましょう。正しい姿勢で歩くと体に無駄な力がかからないので自ずと速く歩けるようになります。もちろんその速さは筋力によって変わるので、より速く歩きたいなら足の筋肉を鍛えるしかありませんが。
以上は健康的に正しい姿勢で歩くことを目的としておりますので、ハイヒールを履いて歩くことは想定していません。お仕事上必要であるという以外は、靴はかかとが低いものを使うのが体にとってはいいことです。
もし職場でハイヒールを履く必要があるという場合は、出勤時には運動靴やかかとが低い靴を使い、職場で履き替えるというような工夫をするのがお勧めです。