家事や仕事は手に付かず、食欲もない。友達と話すのもおっくう――なんていう憂うつな日、あなたはどうしますか。実は気分をパッと明るくする秘策があるんです。
まず、一つの言葉を思い浮かべます。「好き」という言葉です。「私、ベイクド・チーズケーキが好き」という時の「好き」です。次は紙片に「好きな〇〇」と、「好きな」のあとを空白にして5回書いてください。
次に、その日の気分にあった番号を1つ選びます。「今日は3にしよう」と決めたら、さきほどのベスト5の中の「好きな言葉」になります。
そして、今までに「いいな」と思ったり、「救われた」とか「後押ししてもらった」と印象に残る言葉を3つ選びます。
例えば「大丈夫!」「ありがとう」「頑張らなくてもいいんだよ」を選びます。
そこには、何かに失敗して落ち込むあなたという悲劇のヒロインが、ヒーローか取り巻く人々が発する「大丈夫!」というひとことによってどん底から救われる物語が、あざやかに展開されるでしょう。胸躍らせ、感激にひたるあなたがいるかもしれません。
「ありがとう」や「頑張らなくてもいいんだよ」というほかの好きな言葉からも、劇的なシーンが現れるかもしれません。それらの言葉は、今もあなたの支えになっているのです。
「好きなもの」には、人に勇気を与えて元気づける力があります。その力を使って憂うつな心をちょっとハイにするのです。
この「好きなもの」シリーズをもっと続けたい気分だったら、次は音楽にいきましょう。音楽のジャンルは幅広く、何を選んでいいのか迷います。
数年前、サラ・ブライトマンの「Time To Say Goodbye」をカーラジオで聞いてから、声域が3オクターブに及ぶというこの世界的なソプラノ歌手の歌声にすっかり魅せられてしまいました。今、私の車の中は彼女のCDでいっぱいです。
弘前城の夜桜が幻想的に描き出された映像をバックに流れるパッヘルベルの「カノン」をユーチューブで聞いた時、心が洗われる思いをしたのを覚えています。
本の選択は難しいです。まず、「君たちはどう生きるか」を挙げたいと思います。雑誌「世界」の編集長だった吉野源三郎が、中学2年生のコペル君を主人公に人生や人間関係について書いた、熱い本です。
もう70年以上前に書かれた本ですが今なお読み継がれ、岩波書店が創業100年(2013年)に行った「読者が選ぶこの1冊」の「岩波文庫ベスト10」で漱石の「こころ」に次いで2位に入っています。
化学物質による環境汚染を告発した「沈黙の春」は有名ですが、その著者であるアメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンの最後の著に「センス・オブ・ワンダー」があります。
子どもと自然の中に出かけ、自然の持つ神秘さや不思議さに目をみはる感性を育てる大切さを伝えた名著です。30分ほどで読める短編です。
今回は「好き」をキーワードに、あなたの引き出しの中からハッピーの種を探し出してみました。埋もれていたハッピーの種の発掘です。
人は何かに触れて心動かすと、大きく変わります。いかにいいものに出会い、感動するかです。過去に「好き」と感じたこと、いわば一種の成功体験はきっとあなたに自信を連れ戻してくれるでしょう。