女性の眠りの悩みは複雑です。生理前になると昼間はやけに眠いくせに夜になると目が冴えて眠れなかったり、妊娠中は頻尿やつわりで寝不足気味。さらに更年期になると体の不調からイライラが溜り眠れなくなります。
そこで今回は、女性ホルモンのバランスの崩れと体温が引き起こす女性特有の不眠症の原因と対処法をご紹介しましょう。
夜ベッドに入って寝付けるか寝付けないかは、その時の体の体温に大きく関係しています。人の体温は一日を通じて変動していて一番低いのが早朝4時頃、それから徐々に上昇してお昼から午後2時頃ピークを迎えた後は、夜に向かって下がり始めます。
つまり体が体温を下げて眠る準備を始めるのですが、ベッドに入った時も昼間と同じように体温が高いままだと、なかなか寝付けないという事になるのです。
女性ホルモンは卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類があり、生理中には卵胞ホルモンが多く分泌されます。
卵胞ホルモンには覚醒を促し体温を上昇させる性質があり、その影響で夜になっても体温が下がらず寝付けなかったり、睡眠が浅く途中で何度も起きる原因になります。
対処法としては、女性ホルモンのバランスを整えるビタミンB群、特にビタミンB6を多く採ることです。
ビタミンB6は女性にとって大切なビタミンで睡眠時に働く副交感神経の働きを活性化させ気分をリラックスさせる効果があります。食品としては豚肉や大豆、バナナなどに多く含まれています。
また、寝る30分ぐらい前にゆっくりお風呂に入るのも効果的です。体温を一時的に上昇させてベッドに入れば、就寝後の体温との温度差が生まれ眠りやすくなります。
ただし早く暖まろうとしてあんまり熱いお風呂に入ると交感神経の活動が活発になり、かえって脳を興奮させ眠れなくなります。
お風呂の温度は40度くらいのぬるめのお湯に15分から20分程度。それでものぼせそうな方は半身浴でも良いかも知れません。
母体を休養させ、お腹の中の赤ちゃんをすこやかに成長させるために働く黄体ホルモン。妊娠初期にはこの黄体ホルモンの分泌が活発になり眠くなるのですが、仕事や強いストレスで無理に目を覚まそうとすると逆に不眠症に陥ります。
更に妊娠後期には、ホルモンの影響というよりもお腹が大きくなって楽な姿勢で眠れなかったり、頻尿やつわりなどの物理的な要因で眠りにくくなります。
妊娠中の不眠はお腹の赤ちゃんに深刻な影響を与えかねません。ですから赤ちゃんの成長のために眠くなったらまず寝ることを優先してください。女性本来の優れた営みに逆らってはいけません。
妊娠中期から後期に差し掛かると心臓や女性ホルモンの活動がさらに活発になります。この状態で昼間激しい運動を続けたりストレスを溜めこむと、夜になってもその興奮状態が治まらず眠れなくなります。
体をリラックスさせて穏やかな1日を過ごすように心がけてください。寝る時はできるだけ楽な姿勢で、寝具を変えてみるのも効果的です。もしも産前学級に通われるなら、そこでリラックス法を相談するのもいいかも知れません。
女性の更年期障害は卵巣の衰えが黄体ホルモン(エストロゲン)分泌の減少を招き、自律神経に影響を与えて引き起こされますが、その症状の一つに不眠障害があります。主な症状は手足が冷えて眠れない、睡眠中の急なのぼせや異常な発汗などです。
また、更年期により体内時計が早くなる傾向にあり、毎日寝る時間は変わらないのに朝異常に早く目が覚めたり、眠りが浅く睡眠の満足感が得られない状態が続きます。
さらに更年期うつや不安感、過剰なストレスなどの精神的な障害が加わった場合、睡眠障害の症状が悪化する傾向にあります。
昼間は外出を心がけて、なるべく日光にあたって下さい。近所をウォーキングしたり、おしゃべりしたりしてストレスを発散します。適度な疲れは心地よい睡眠につながります。それとお昼寝は午後3時までに30分程度、あまり長いと夜の睡眠に影響します。
自宅で色々試してみても状態の改善が見込めない場合はがまんしないで、心療内科や精神科の専門医にご相談ください。更年期障害を緩和するホルモン充填療法や漢方治療など適切な治療法を提案してくれます。
他にも不眠に有効な対処法がありますので、いくつかご紹介しておきましょう。
寝る前のちょっと空いた時間についスマホやパソコンを覗き込んでしまう人は要注意!脳が興奮状態になって眠れなくなります。
お休み前には、ホットミルクやココアなど気分の落ち着く飲み物を飲んで体も心もリラックスさせることを心掛けましょう。
睡眠前に体温を上げておくという意味では、寝る前のストレッチなどの軽い運動は最適です。ですがあんまりやりすぎると汗が出てかえって体を冷やしてしまう結果になりますのでご注意を!体が暖まったらすぐにベッドに入りましょう。
もともと胎教音楽として用いられるバッハやモーツアルトなどのクラシック音楽。そのゆっくりした絶妙なテンポが心をリラックスさせ眠りに誘います。妊娠中のお母さんの不眠対策にはピッタリですね。
毎日同じ時間にベッドに入る必要はありません。むしろ眠くなるまでベッドに入らないことです。例えば夜10時に寝ると決めている人が寝付きが悪いからと9時にベッドに入ってもなかなか寝付けません。かえって遅く寝た方が早く寝付ける場合が多いのです。
例えば生理中に女性の体が排卵を始めて受精を待つ間は、覚醒を促す卵胞ホルモンの分泌が盛んになり受精できるチャンスを多くしようとします。
逆に妊娠中にはお腹の赤ちゃんを健康に育てるため、お母さんに無駄なエネルギーを使わせないように眠りを促す黄体ホルモンの分泌が盛んになるのです。
このように、女性には子供を生む性としての見事なメカニズムが備わっているのですが、そのメカニズムが結果的にホルモンのバランスの乱れを招き、眠れなくなってしまうのが現実です。
ですが睡眠は健康で健やかな生活を送るためにはとても重要なことです。ぜひこの機会に自分に合った不眠の対処法を見付けてみてはいかがですか。