低用量ピルが日本で認可され、約15年が経ちました。中用量ピルと比べると副作用は少なく、安全性の高い薬として開発された低用量のピルは、普及率は徐々に増えてきました。
単なる避妊だけではなく、生理不順の改善や美肌やバストアップにも効果があるとして、女性にとって非常に便利なツールとして認識されるようになったとも言えます。
しかしその反面、副作用もあります。ほとんどは些細なものですが、まれに命にかかわる副作用もあるため、ピルユーザーはきちんと理解しておくことが大切です。
また、低用量ピルの服用を検討しているけれども、副作用が怖く今一つ踏み出せないという人も少なくないと思います。実はほとんどの副作用は心配はいらないものなのです。
そこで今回は、低用量ピルにはどんな種類があるのか、また副作用の対処法についてまとめていきましょう。
低用量ピルを服用すると、妊娠している時と同じホルモンバランスになります。そのため、妊娠しなくなりますが、つわりに似た症状が起きやすくなります。
特に服用開始から2~3ヶ月の間は、体がホルモンバランスの変化に追い付かないので、以下のような症状がみられます。
基本的にはあまり問題のある副作用ではなく、2~3ヶ月すると軽快するので、しばらくは様子をみましょう。
医学的には問題ないとはいえ、仕事や学校、プライベートなどに支障があるのは辛いですよね。ちょっとしたコツは、服用する時間を夜寝る前にすることです。服用直後の2~3時間がもっともホルモンの血中濃度が高くなるので、その間に眠ってしまえばいいのです。
低用量ピルはその名の通り、ホルモンの含有量が高・中用量のピルに比べて少ないです。ホルモンとはエストロゲンとプロゲステロンという二種類の女性ホルモンのことですが、子宮内膜をフカフカに維持するはたらきがあります。
低用量ピルはこれらのホルモンの含有量が少ないため、子宮内膜が剥脱し、不正出血が起こりやすくなります。
不正出血の頻度は比較的高く、服用開始1ヶ月目で出血がある人は全体の1割~3割程度とも言われています。しかし、2シート目、3シート目と続けていくうちに体がピルに慣れ、およそ3ヶ月も経過すれば多くの場合不正出血はおさまります。
悪心等と同じように、不正出血も服用開始時には非常によくある副作用なので、しばらく様子を見ましょう。
また、服用時間が日によってバラバラの人は、時間を決めて飲むようにしましょう。服用間隔が24時間を超えると不正出血しやすくなると言われています。
ただし注意したいのは、出血がピルの副作用ではなく、がんや筋腫といった他の病気由来のものという可能性もあります。不正出血が続く場合は主治医に相談の上、必要に応じて検査をするようにしましょう。
「低用量ピル」と一言で言っても、実はさまざまな種類が販売されています。
すべての錠剤に同じ量のホルモンが含まれるものや、生理周期に応じてホルモンの量が増減するものなどあります。
また、含まれる黄体ホルモンの種類に応じて、第一世代・第二世代・第三世代に分けられます。さらに、メーカーによりホルモンの量が微妙に多かったり少なかったりします。
日本でも非常に多くの種類の低用量ピルが入手可能ですが、種類によって、比較的不正出血しにくいものや、イライラ感がしにくいもの、子宮内膜症などの疾患に予防効果が高いものなど、効果は異なります。
ちなみに日本では低用量ピルの普及率はたった3%程度ですが、「ピル先進国」と言われる欧米諸国では、自分の体質にあったピルを探すことはもはや常識です。
もし悪心や不正出血といった副作用が長く続いたり、なんとなく「自分には合わない」と感じる場合は、思い切って薬を変えてみるという選択肢もあります。低用量ピルを服用する理由によっても、適切なピルがどれになるかは変わってきます。
低用量ピルの種類の選択によって、副作用が軽減される可能性もあるので、医師に相談しましょう。
低用量ピルは、高・中用量ピルと比べて重篤な副作用の可能性は非常に低く、安全性の高い薬です。
しかし、まれに血栓症を引き起こすことがあるため、服用している方は注意しておきましょう。
血栓症とは血液が血管の中で塊になってしまい、血管を壊死させる疾患のことです。全身の血流が悪くなり、最悪の場合死に至ります。
血栓症に罹ってしまった場合は以下のような症状が見られます。万が一このような症状がある場合は、すぐに医師に相談しましょう。
しかし低用量ピルを服用しているからといって、血栓症のリスクが急増するわけではありません。特に基礎疾患がなく、用法用量を守って服用していれば、服用していない女性と比べても血栓症の発症リスクはわずかに高くなる程度です。
実際に統計をとったデータがありますが、ピルを服用していない女性のうち血栓症を発症するのは、1万人中1~5人であるのに対し、低用量ピルユーザーは3~9人程度です。
ちなみに妊婦は5~20人、産後12週以内の女性は40人以上と言われています。こうしてみると、低用量ピルを服用していても、特別に高い数値ではないですね。
しかし、血栓症の発症リスクを劇的に上げる危険因子があります。喫煙、年齢、肥満です。特に、35歳以上で一日15本以上の煙草を吸う人は、低用量ピルは処方できませんのでご注意ください。
命に関わるような副作用と聞くとドキッとしますが、血栓症はほとんどの場合、低用量ピルを服用開始してから3ヶ月以内に発症します。長く飲み続けているとリスクは下がります。
避妊以外にも、美肌効果や生理不順、子宮内膜症の改善のためなど、さまざまな理由により低用量ピルを使う人は増えてきています。多様化する現代社会において、女性の生活の質を向上させるために非常に有効なものです。
しかし、非常に便利で安全性の高い薬であるにも関わらず、海外と比較すると日本のピル浸透率はあまり高くはありません。これは、副作用に対して漠然と不安なイメージを持つ人が多いという理由が挙げられます。
副作用は確かにありますが、必要以上に恐れることはありません。知識として副作用を知っておくことはもちろん必要ですが、服用するメリットの方がはるかに多いので、上手に活用しましょう。