妊娠中のママは出産が近くなってくると、期待と不安で胸がいっぱいになります。
早くお腹の中の赤ちゃんに会いたい!という期待と、私に出産が出来るのだろうか・どんな痛みなのだろうか・・・という不安が混ざってしまい、お産の前は、皆、少し複雑な気分になっていることでしょう。
出産を控えるママにとって、一番恐ろしいと感じているものは“出産”です。
初産であれば、出産自体が未知なる世界で、想像が出来ないことから非常に大きな恐怖を感じてしまいます。なんとなく想像出来ていても、出産はイレギュラーな自体が起こってしまうことも珍しくありません。
これは正直なところ、経産婦であっても同じ事。出産の痛みとは、何度経験しても間違いなく“痛い”のです。しかし、分娩を乗り越えなければ我が子に会うことが出来ません。産むと決断した時点で、分娩への覚悟を決めなければなりません。
初産の妊婦さんであれば特に、「出産が怖いな」「どんな痛みなんだろう」「いつ痛みがくるの?」「テレビで見るような感じなのかな?」・・・などなど、疑問が沢山浮かんでしまいます。
「この世の痛みではないよ!」と聞かされたり「想像以上に過酷だ」という話を聞いてしまうことで、ママの不安は出産に近づけば近づくだけどんどん増してしまいます。
今回は、そんなママたちに、出産の進み方や、痛みの感じ方・痛みの乗り越え方などをお伝えしていきます。最近では、ママたちの希望によって自然分娩だけでなく、水中出産・無痛分娩・・・医師の判断によって帝王切開・・・等の、様々な分娩スタイルがあります。
沢山ある分娩スタイルの中で、今回は最も多いとされている“自然分娩”での陣痛・分娩時の痛みを乗り越える方法をお伝えします。お産の流れに沿ってお伝えしていきますが、痛みの感じ方にも個人差があるので、あくまで参考までに・・・という意識で読んでください。
まず、自然分娩の流れに沿って“痛みがあるのかどうか”や“痛みの感じ方・乗り越え方”をお伝えしていきます。
自然分娩の場合、陣痛が来るまでに“おしるし”と“破水”という兆候がみられます。これも個人差があるので、兆候の無い方も沢山います。一般的な自然分娩の流れに沿いながら見ていきましょう。
“おしるし”と聞くと、皆さんは何を想像されますか?「お印?」「赤ちゃんからのサイン?」等、おしるしを経験された事が無い方はおしるしがどんな物なのかも想像がつきません。
おしるしは赤ちゃんを包んでいる卵膜が子宮から剥がれたはずみで出てしまう出血です。
赤ちゃんが「そろそろお外にでる準備をしよう!」と言っているサインのようなものでもあります。赤ちゃんが動いたり、子宮口が少し開いたりした時に、卵膜が剥がれて出血を起こします。
痛みを感じることはほとんど無く、いつもと変わらない生活の中でお手洗いに言った時に「・・・あれ?下着に血がついてる」と気づく程です。
このおしるしが起きたら「そろそろお産が近いんだな!」と思って、日常生活には十分気をつけてください。早い方では、おしるしが起きた日に陣痛が始まり出産をされた方もいますし、遅い方であればおしるしから数日経っても陣痛が始まらないという事もあります。
焦らず、赤ちゃんのペースに合わせてゆっくり時を待ちましょう。
出血など見てしまうと、「いよいよなんだ・・・」と、怖い気持ちに拍車をかけてしまうかもしれませんが出産はママ単独の仕事ではありません。お子さんも一緒に乗り越えてくれるものです。「ママはいつでも大丈夫だよ」とお腹に優しく声をかけてあげてください。
破水という文字だけ見ると、非常に恐怖を感じますね。お腹の中の物が破れて、水が出てくる・・・なんて考えただけでゾッとします。「絶対に痛いんだろうな・・・」と思う方が多いのですが、破水も、実はおしるしと同じで、痛みを感じることはありません。
破水は、赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れてしまい、羊水が出てきてしまうことを言います。よく「チョロチョロ出てきたから尿漏れかと思った」や「おしっこ?汗?見分けが付かなかった」と言う声を聞きます。
痛みが無い上に、ドバッ!と出てくるものではないため、妊婦さん本人でさえ、それが破水だと気づかないケースもあります。
赤ちゃんの頭が栓になり、漏れてくる羊水を止めてくれるので、一気に大量の羊水が出てくることはありませんが、破水をしてしまうと、外からの菌が侵入し感染してしまう危険もあるので、早めに産院へ連絡を入れ、指示に従う必要があります。
痛みが無いため、破水も“痛みを乗り越える”というよりは無意識のうちに破水している・・・といった形になります。破水後は、出てくる羊水を受け止めるように夜用の大きなナプキンや、新生児のオムツなどを利用し、ショーツに当てておきましょう。
おしるしと同様、破水をしたからといってすぐに陣痛の痛みがくる訳でもありませんし、すぐに感染症になってしまうという事でもありません。
焦らず、ゆっくりと対処し、産院に電話をかけ、指示をもらうようにしましょう。疑問や質問に関しては、産院に連絡した時にでも看護婦さんに聞いてみても良いです。
ちなみに、おしるしでも同じことが言えますが、破水も、陣痛が来るまえに起きてくれる方と、陣痛が始まり、痛みが強くなっても破水していない!という方もいます。
破水のタイミングも人それぞれです。おしるしも陣痛も無いのに破水をしてしまう(前期は酸い)という方も少なく有りません。
おしるしが来て、陣痛が来て、それでも破水していない場合には、分娩台で助産婦さんが、子宮口の開きなどを調べるタイミングやお産の進み具合を見て、指で破水をさせてくれますのでご安心を。
お産の流れとして、おしるしがあり、破水が起きた後は、陣痛に繋がっていくだけです。陣痛は、子宮口が開く時に感じる痛みです。「出産は痛い」「想像以上の痛さだ」と皆が声を揃えて発する“痛み”の正体は、この陣痛とも言えます。
イメージとしては軽い腰痛・軽い生理痛・腰あたりのだるさ・・・といったものでしょう。重たい荷物を持ったり、沢山運動をした翌日の軽い腰痛が起きてしまっているような感覚です。
この段階では「え?これが陣痛?全然平気だ!」と余裕いっぱい。間隔としては、個人差もありますが10分~15分(20分)間隔で微弱陣痛が起きます。
腰痛のような痛みを感じている時間はものの1・2分程度でしょう。1・2分の痛みを乗り越えたら、スーッと痛みは引いていき、何事もなかったかのような通常の腰に戻ります。
痛みが引いたあと、10分~15分(20分)経った後に、また同じような痛みが1・2分継続する・・・といった具合に、繰り返し繰り返し起こる痛みが“陣痛”です。陣痛が強くなってくる頃には、いよいよ入院となっていることでしょう。
陣痛が弱いうちは余裕の表情で、歩いたり、家事をしたり、テレビを見たりする気力も十分にあったはずです。しかし、本当の恐怖はここからです。
陣痛の痛みは次第に強くなります。先ほどまで軽い腰痛だったように感じた痛みが、だんだんズッシリと重たくなり、腰だけでなく下腹部も痛みを感じるようになります。
そのうち、重い生理痛のような辛い痛みや、腰を強く叩かれているかのような深い激しい痛みに変化をしていきます。ママたちは「これが陣痛なんだ・・・」と次第に感じてくるでしょう。しかし、まだまだです。この程度の痛みでは赤ちゃんは産まれません。
陣痛が強くなってくれば、ママも痛みに必死に耐えなければなりません。痛いからといって後には引けないですし、すぐに息んで、赤ちゃんが産めるわけでもないのです。
赤ちゃんを産む(息む)タイミングは、子宮口が全開(約10センチ)にならなければ赤ちゃんの頭が通らないので、そこまでは我慢をして痛みに耐え続けなければなりません。
これが“息み逃し”と言われるものです。赤ちゃんが産まれるだけの子宮口になっているのかどうかの判断は、医師がしてくれます。
陣痛の痛みは下腹部・股間・股関節・背中(腰)付近です。普段使わない筋肉に力を入れるので、全身の筋肉が疲労を感じてしまうような違和感はあるかもしれませんが、足先や上半身の“痛み”は感じません。
痛みが下腹部に集中するので、痛みを乗り越えるためには、この下腹部の痛みに対する対策を考える必要があります。
よく耳にする“テニスボールで腰を押す”といった対策ですが、腰の砕かれるような痛みに耐えるため、腰を押す・指圧させる・・・といった方法が痛みを緩和させると考えられ、多くの妊婦さんが試しています。
効果がある!と感じた方も沢山いますし、全く効果がない!と感じた方も多いです。しかし“押す”という行為は、痛みを紛らわしてくれ、押されたことで痛みの感じ方にも多少の変化があると言えます。
全く無の効果というわけではないので、実際に試してみると良いでしょう。テニスボールでなくても、旦那様に腰を指圧してもらうのでも良いです。ただ、旦那様に指圧してもらうとなれば分娩台で横向きの体勢にならなければなりません。
陣痛中は横向きの体勢になる方が楽という方もいるのですが、赤ちゃんが産道を出てこられるよう、分娩がスムーズに進む体勢はやはり上向きに寝転がることです。
苦しいかとは思いますが、少しでもお産をスムーズに進めるために、我慢できるのであれば上向きのまま陣痛に耐えましょう。
周りのママの「腰をさすってもらうと心地よかった」という意見を参考に、実際、旦那さまにお願いし、試してみると、満足のいく圧力・さすり方ではなくかえってイライラしてしまった・・・というケースもあります。
このケースの妊婦さんだと“腰をさすってもらう”が心地よいどころかマイナスな行為であると感じているはずです。
その他には、腰をカイロなどで温め、痛みを緩和させる方法を試したり、陣痛が来た時に分娩台付近にある“手を握れるバー”をグッとにぎって、痛みに耐えるという方法も効果的です。
痛みを感じたら深呼吸をし、陣痛の波と呼吸を合わせてみる・・・なども良いかもしれません。
とにかく陣痛中は余裕がありません。乗り越え方を事前に考えていても、いざ陣痛が起きてしまうと、その時一番ベストな方法を瞬時に見つけ、乗り越えていくしかありません。
「これは絶対に有効だ」という方法も、人によって違うので、沢山の意見を聞き、沢山の乗り越えパターンを覚え、実践してみる事が一番です。
子宮口も全開に開き、赤ちゃん誕生が近くなると、医師が“会陰切開”をするかどうかの判断をします。
局部麻酔は痛みを感じる方もいれば、全く感じないという方もいます。痛みを感じたとしても、陣痛の痛みで下半身は多少の痛みに強くなっている(慣れている)ため、局部麻酔の痛みなど一瞬のものでしょう。
麻酔が効いた後に切開をするので、“切る”痛みは全く感じないと言っても良いでしょう。
会陰切開の痛みに対する乗り越え方も、“陣痛の痛みに下半身が慣れているので乗り越える程でもない”と言えるかもしれません。
そこまで深刻に・恐怖に感じることはありません。切った後の処置もちゃんと行ってくれますし、回復もさほど時間はかかりません。
赤ちゃんが誕生する瞬間の痛みって、どんなものなのでしょうか。「陣痛はすごい痛いよ!」という話はよく聞きますが「産む瞬間はすごく痛いよ!」・・・なんて聞いた事はあるでしょうか?
陣痛こそ、強く激しく重たい痛みを感じるものの、産む瞬間というものは、意外にも“痛み”を感じないものなのかもしれません。
産道を通る瞬間など、何に痛みを感じているのか?産道を通る事自体、痛みが生じているのか?すら判断がつきません。
陣痛の過酷さを乗り越え、最後には、医師の指示の元、下腹部に力を入れて赤ちゃんを産みます。この時の息みは“痛さに耐える”ことではなく、“体内から赤ちゃんを出す”という行為に集中するので、痛みよりも必死さで頭がいっぱいになります。
人それぞれかもしれませんが、出産の痛みとは、主に陣痛の事を伝えている場合が多く、赤ちゃんを産む瞬間・産んだ直後は自然と痛みを感じない方が多いです。
晴れて赤ちゃんの誕生!ついさっきまでお腹の中にいた我が子にとうとうご対面・・・この時には、今までの陣痛の痛みや苦しみなど、殆ど頭に残っていないほどの達成感・感動で心が満たされているはずです。
「赤ちゃんの顔を見たら痛みなんて忘れた」という台詞をよく耳にしますが、まさに言葉の通りです。
赤ちゃんを見て、深い深い感動を感じている時は、下半身の負傷など嘘のように頭から飛んでしまいます。これ以上骨盤を広げるための陣痛も起こりませんし、赤ちゃんを産むための息みも終わり。ママたちは様々な痛みに“乗り越えた”瞬間です。
・・・しかし、最後にまだやるべき仕事が残っています。赤ちゃんに沢山の栄養を送っていた胎盤を出さなければなりません。
最後、医師による処置を受け、会陰切開された方は、切った箇所を縫い合わせなければなりません。まだかろうじて局部麻酔が効いているうちに、麻痺した切開部分を針と糸で縫っていきます。
この縫い合わせる時の痛みを感じる方もいれば、麻酔のおかげか、全く感じないという方もいるので一概には言えませんが、痛みを感じた場合にも、耐えるだけの力がすでについています。
陣痛を乗り越えたのですから、縫うだけの痛みも少し我慢をすれば、あっという間に縫い合わせてくれます。
麻酔が切れてくると、縫った箇所に痛みを感じるかもしれませんが、あまりに辛い痛みであれば痛み止めを処方してもらうこともできます。
もちろん、産後に、おしっこも便もママの力で通常通り行うのですが、沢山の負傷を追った陰部・肛門(お産を機に痔になる事も多い)を今まで通りにおしっこ・便をするなんて、ママたちにとってはそれもまた恐怖の1つでしょう。
出産の痛みも、産後の痛みも、一言では言えないほどです。これだけの内容を見ると、沢山のママが「命がけだ」と言っていたり「想像を絶する」という事も納得が出来ると思います。しかし、必ず最後には感動があり、達成感があり、喜びがあります。
“案ずるより産むが易し”という言葉がありますが、その言葉の通りで、考えても考えても、痛みの想像は出来ません。考えるよりも実際に産んでみると、“耐える事ができる痛み”なのです。
未知な痛みを乗り越えるためには、沢山の乗り越える秘策や情報を集め、実践するしかありません。