出産はどの妊婦さんにとっても不安に感じられるものですが、中でも不安に思うのは、「もしも帝王切開で産むことになったらどれぐらい痛いんだろう」という、手術の痛みについてではないでしょうか。
普通分娩で産まれると思っていたのに、産む段階になったら急遽帝王切開をすることになってしまった先輩妊婦さん達のケースを聞いて「自分が産む時に帝王切開になったらどうしよう」と、未知の痛みに対する不安を感じるのは無理もありません。
出産は産まれる瞬間までどのような状況になるかということは全くわからないのですから。
ですが無事に帝王切開での出産を終えている女性は多勢いるのです。帝王切開の手術でどんな経過を辿るのか簡単な知識を頭に入れておけば、不安の種が和らぐかもしれません。
妊娠してから出産するまでの間に受ける妊婦健診をどこで受けるか、どこで出産するかは、妊婦さん一人一人の理由がそれぞれあって、自宅近くの個人の産婦人科を選ぶ人もいれば、大きな総合病院に通うことを選ぶ人もいます。助産院での出産を希望する人もいます。
ですが、もし何らかの理由で急遽帝王切開をすることになった場合には、手術に対応できる比較的大きな病院に移ることになります。帝王切開に対応できる病院の在り処を確認しておけば心強いでしょう。
逆子で自然に赤ちゃんが産道を通って出てこられない場合や、出産中に臍の尾が絡んだりして赤ちゃんが自力で出てこられないトラブルが発生した場合には、自然分娩で臨んでいても、途中から急遽、帝王切開に切り替えられることがあります。
出産予定日よりもかなり早く産まれてしまう早産や、出産予定日を何日も過ぎても産気づく気配が無い場合等、母子の健康状態を考えた都合で、帝王切開の処置がとられることもあります。
帝王切開の処置がとられることになった場合には、手術の承諾が必要になります。手術の承諾書に夫のサインが必要になります。帝王切開で産むことになる可能性は誰にでもあります。夫とは出産時に連絡が取れるようにしておきましょう。
帝王切開で気になる問題点は出産時の痛みです。手術時の痛みに耐えられるのだろうかと出産を控えた妊婦さんは不安に思うかもしれません。
ただし、意識を完全に無くすわけにはいかないので全身麻酔をするわけにはきません。お腹を中心にした局所麻酔になります。人によって手術中の痛みの度合いいが異なるのは、この時の麻酔の効きが完全か不完全かの違いによります。
手術中の痛みが心配な場合は、麻酔に定評のある病院を選ぶことがポイントになります。手術中は意識があるため、手術の出血による寒さを感じるかもしれません。身体の寒さと震えに不安になるかもしれませんが、手術が済む頃にはそれも治まります。
手術は数時間以上に及びますが、無事に赤ちゃんを出産した瞬間には、赤ちゃんとの対面ができます。自然分娩と同じように、赤ちゃんの姿を目で確認して、産声を聞くことができるのです。その後は母体の胎盤の処置などが施されますので、まだ少しの辛抱が要ります。
帝王切開で痛みを感じるのは、手術中よりもむしろ手術後の麻酔が切れた時から始まります。痛みに耐える時期は出産後1日目から2日目がピークと言えるかもしれません。ですが3日目辺りからは痛みは多少和らいでいきます。
出産後は当然すぐに動くことはできません。手術が終わってから数日は自分で自由に動いたりできないので、その辺りは自然分娩には無い我慢が必要です。出産後すぐに自分で赤ちゃんに母乳を飲ませるのは無理なため、赤ちゃんに母乳を飲ませるのは数日後になります。
手術後5日ぐらいすればちゃんと動けるようになります。それぐらいの頃から動き始めた方が傷の治りには良いのです。初めはお腹を庇うような歩き方になり、前かがみぎみに歩く人が多いようです。でも、日が経つにつれ、徐々に元の普通の歩き方に戻ります。
その後は普通に自分の身の周りのこともできるようになります。身体が快復するにしたがって痛みも薄らいで気にならなくなります。赤ちゃんの世話も支障なくできるようになります。
自然分娩の場合は一週間が退院のメドになりますが、帝王切開の場合は、手術ということになりますから、自然分娩よりも入院日数は若干長くます。10日から2週間ぐらいだと考えておけばいいでしょう。それぐらいの違いで普通に退院できるのです。
手術後の経過が順調であれば、自然分娩の人達と退院までにかかる日数にそんなに大きな違いはないことからも、帝王切開を必要以上に心配することは無いと言えます。
帝王切開の場合、何らかのトラブルが出産時に起きているわけですから、早産などで赤ちゃんが体重2500グラムに満たない未熟児で産まれることも考えられます。そういう場合は赤ちゃんの体重が退院の基準に達した時点で赤ちゃんの退院となります。
お母さんの方が先に退院して未熟児の赤ちゃんだけが病院に残るというケースも出てきます。そういう場合は、お母さんの身体を休める期間だと考えて、赤ちゃんの発育が退院するのに充分だと判断されるまで自宅で待ちましょう。
温泉に入った時に人に見られやしないか、子供と一緒にプールに入る時にセパレートタイプの水着が着られないのではないかと心配になる人もいるでしょう。下着のお洒落ができなくなるのを心配する人もいるかもしれません。
でも、出産後にお腹の膨らみが徐々にしぼんでいくのと同じように、心配する傷痕も徐々に小さく目立たなくなっていきます。傷痕が目立たなくなれば、抵抗なくそれまでと同じように温泉に入ったり、水着でプールに入ったりすることもできます。
出産時の痛みに対する不安を感じるのは誰でも同じです。特に初産なら不安に思う気持ちは当然のことと言えます。でも、“案ずるより産むがやすし“です。手術は痛いという不安を必要以上に抱えないようにしましょう。
帝王切開に臨んで実際に出産を無事に終えて、普段通りの生活を始めれば、赤ちゃんの世話と日常の生活に追われて手術時の痛みのことなど忘れてしまいます。快適なマタニティ生活を送るために、出産の日までの一日一日を大切に過ごすように心がけましょう。