晩婚化傾向が進むにつれ、女性が子供をもうける年齢もまた高くなってきました。それと同時に、不妊症に悩まれている女性も増えてきているようです。不妊症治療に対する需要は今後ますます増えていくことでしょう。そのための選択肢の一つとして鍼灸治療があります。
鍼灸というと肩こりや腰痛を治療するものというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
確かに日本における鍼灸の需要は肩こり、腰痛が圧倒的に多いのは確かです。しかし、高度な中国医学を用いた中国鍼はそれ以外の様々な症状に対応することができます。不妊症もそのうちの一つです。
中国医学理論では不妊症は様々な原因により起こると考えられています。主な原因としては「腎虚」「肝鬱」「痰湿」「血瘀(お)」の4つとなります。以下それぞれについてわかりやすく解説します。
中国医学における「腎」は腎臓そのもの以外に、人間が両親から受け継いできた生命力の元が宿る場所とされています。
「肝」は人間の全身の「気」の働きをコントロールしています。しかし、肝の働きが「鬱」つまり滞ると正常な気の働きも滞ります。
中国医学でいう「痰」は、体内に滞った水分が凝縮し病的な物質になったもので、一般的にいう喉にからむ痰は、広義の痰の中の一つとなります。「湿」はその「痰」を生みだす元となる余分な水分です。
瘀血(おけつ)という言葉は聞いたことがあると思います。「血瘀」はその瘀血が体にある状態の症状を指します。
鍼灸治療ではまずどの原因によって不妊症があらわれているかを、様々な診察によって明らかにしていきます。
腎虚であれば体全体のだるさなどがあるし、肝鬱であれば脇腹の痛みやイライラなどがあります。痰湿の場合は寒気がしたり、体が重くやる気がでなかったりします。血瘀の場合は刺すような痛みがあります。
そのような指針のほかに、舌や脈の状態を見て総合的に判断をし、腎虚であれば腎の働きを活発に、肝鬱は肝の流れをよくして鬱帯をとり、痰湿や血瘀の場合は水分や血液の流れをよくします。
また、臨床ではそれらの根本原因を除くとともに、胃腸の働きを改善するような治療や下腹部を温めるような治療も加えます。
具体的にどのような経穴(いわゆるツボ)を選んで組み合わせるかは症状によっても、患者さんの体質によっても、変わってきます。冷えが強いような場合は、お灸も加えて治療する場合もあります。
ただし、効果は数ヶ月で出ることもあれば数年かかることもあるので、効果が出るまで続けるという覚悟だけは必要です。
また、理想を言えば治療にあたる鍼師と同等以上の知識レベルがあり、鍼の治療と方針を同調できる漢方薬の専門知識がある薬剤師さんにも相談し、漢方薬を併用するともっと効果は高くなります。
ただし、不妊症治療は鍼灸師誰でもできるというものではありません。最低限上述のような不妊症への中国医学的な理解と分析ができて、それを基に中国鍼で治療できる鍼灸師でなければ徒労に終わるでしょう。
ここで中国鍼と強調しているのは、日本の鍼では刺激が弱すぎて不妊症を改善できるだけの力がないからです。
女性の先生に限らず、知識と技術がある先生なら男性でも頼るべきだと思います。